翌朝、起床時刻になっても、真由夏はテントから出てこなかった。
一番年の近い参加者の女子大生に、テントの外から声を掛けさせると
「すごくお腹が痛いです。急に生理になったみたいで…」と言った。
この答えを聞いて俺は、真由夏は可愛いだけでなく、聡明な少女だと確信した。
レイプによる破瓜と、急な生理は、現象としてよく似ている。アソコからの出血と、激しい下腹部の痛み、などだ。
それでも、真由夏のテントの中は、射精による生臭い匂いが籠もっているおそれがあるので、俺は管理棟から女性スタッフに来てもらい、真由夏に、自力でテントの外まで出てくるように促した。
這い出て来た真由夏は、俺とは目を合わせず、女性スタッフに支えられながら管理棟へと歩いて行った。
残ったソロキャンプ教室参加者は、真由夏のテントの片付けを申し出たが、俺は
「それは後でスタッフがやるので、レクチャーの続きをしましょう」と言って断った。他の女性参加者に、レイプとセックスの痕跡を気づかれないようにするためだった。
そして、他の参加者に次の活動を指示した後、手早く真由夏のテント内の私物をまとめ、管理棟に届けた。真由夏は親に迎えに来てもらって帰ることになったようだ。
教室が終わった後、改めて真由夏が使ったレンタル品のテントとシェラフを点検すると、やはりあちこちに体液や血の痕跡が残っていた。俺はそれを、渓流に持って行き、タワシでゴシゴシ擦って洗い落とした。
真由夏へのレイプに成功した夜は、発覚して逮捕されても悔やまないと思った。しかし、時間が経つと、やはり娑婆に未練が出てきて、しばらくはビクビクしながら過ごした。だが真由夏の家からは、ソロキャンプ教室の翌日にお礼の電話があっただけ。真由夏はうまく隠し通しているようだった。
ところが、それから2週間ほど経ったある日、事務所に真由夏本人から電話がかかって来た。電話に出たスタッフには「ソロキャンプ教室のインストラクターさんに、迷惑を掛けたので自分で直接お礼を言いたい」と言ったらしい。
しかし俺が電話に変わってみると、一転して深刻な声で「あの、相談したいことがあるんです。一度、街で会ってもらてませんか?」と言った。俺は直感的に『疑われている』と感じたが、無碍に断ると却って面倒なことになりそうだった。
俺は次の休みの日、真由夏と会う約束をした。
当日、真由夏が待ち合わせに指定してきたのは、賑やかな通りにあるカフェだった。ここなら、会話が他の客に聞かれることもなさそうだ。沈んだ様子で俯きがちに現れた真由夏は、テーブルに着き、飲み物を頼んでも、しばらくは言い出しづらそうに俯いていたが、やがて
「あの、ソロキャンプ教室の夜、あたし、襲われたんです。」と言った。
俺は精一杯、驚いたふりをして
「襲われたっていうのは、その…」
「…レイプです。男の人が、テントの中に入ってきて、顔にタオルを被せられて…なんでだか、手が動かなくて、シェラフを開けることもできなくて…」
そう話しながら、真由夏は何度も俺の顔をチラ見して、反応を確かめた。
「…そのこと、家族の人には?」
真由夏はおおきく首を横に振り、
「知られたくない。うちの親が知ったら、絶対警察に通報します。警察の人に、色々聞かれたりしたら、あたし…」
「そうか。そうだよな。いや、あの夜は十分周囲を警戒したつもりだったんだが、守ってあげられなくて申し訳ない!」俺はテーブルに両手をついて謝った。
それを見て真由夏は
「本当に、済まなかったって、思ってます?」と聞いた。本来の彼女は、そんなことを言う子ではない。だが、この時はそう言わずにはいられなかったのだろう。
「ああ、本当だ。」俺はもう一度頭を下げた。
「本当なら、あ、あたしのこと、大事にして下さい…」
俺はあっけに取られた。
「…そりゃあ、俺にできることなら何でもしてやりたいが…大事にするっていうのは?」
真由夏は少し顔を赤くして
「楽しいところに連れてってくれたり、お買い物とか、あと、一緒にお食事も…」
「…いいよ。でも、それじゃあまるで…」
デートじゃねえか?と俺は言いかけた。
すると真由夏が先回りして
「分からないんです!この気持ちが、何なのか。でも、このまま離れちゃいけない、二度と会えなくなるのは、間違ってるって、どうしてもそう思えて…」
『これはひょっとして…インプリンティングか?』
俺の頭にそんな言葉が浮かんだ。
少女にとって、処女を失って女になるのは、生まれ変わりのようなものだと聞いた。そして、たとえ相手の男が意に染まない奴だとしても、小鳥が孵化して最初に見た物を親だと思い込むように、特別な、離れがたい存在だと思うようになる。
昔の男はそんな娘心を利用して、『1度ヤッてしまえばこっちのもの』などと言っていたらしい。
ネットで、よばいレイプの成功談を漁っていた時、そんな話をいくつか目にしたが、まさか自分がそんなことになるとは…
真由夏が望むなら、デートしてやるのはいい。だが俺は、そもそも街が苦手なのだ。真由夏を楽しませてやることが、できるだろうか?
「楽しいところか…なぁ、真由夏は山が好きなのか?」
「はい!ブームとか関係なくて、小さい頃から…高校へ行ったら、山岳部に入りたいんです。山岳部がある高校を受験して…」
「そうか。俺が連れてってやれるのは、アウトドアや登山用品の店くらいだ。そんなのでもいいか?」
「はい!すごく、楽しそうです!」
その次の休みの日から、俺は真由夏と待ち合わせをし、なじみの店を連れ回した。素人があまり使わないようなキャンプ用品や、登山道具など、店にある品を手に取って教えてやると、真由夏は目を輝かせた。いずれ手に入れたいと思う物があると、スマホで写真も撮った。
『これはホンモノだな』
そう思った俺は、範囲を広げ、近場の里山での山歩きや、知り合いのバーベキュー場へ行って火起こしも教えてやった。
真由夏はいつも楽しそうだったが、俺の方には迷いがあった。
『こんなこと続けていて、いいのか?真由夏は今でも、俺のことをレイプ犯と疑っている。俺は何があっても認める気はないが、真由夏の中で、いつか疑いが確信に変わったら、どうなっちまうんだ?』
そう思いながらも、俺の方も次第に真由夏とのデートが楽しくなり、自分から断ち切ることはできなくなっていた。
そんな関係が2カ月も続いた、ある日のことだった。
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