あ~もうこんな時間~。
まほちゃん急ごっ、おじちゃん、先行くねっ
らな、まほも部屋を出ていく。
そのうち少女たちのきゃあきゃあと、はしゃぐ声が聞こえて来た。
色んな衣装が着れて楽しくて仕方がないのだろうな。
俺も、指定された場所についた。
そろそろ撮影開始の時間のはずだ。
しかし時間になっても一向に京子は姿を見せない。
流石に15分をすぎたところで、京子を探しに行った。
廊下を進んだ先で、京子と男の声がする。
相手の声は、あきらかに苛立っていた。
聞き耳を立てなくても、二人の会話は筒抜けだ。
「青楼少女館と煽っておいて、緊張感も臨場感もまるでない。これじゃ只のコスプレ撮影じゃないか」
「この調子で撮影されたらお前を推した俺の首が飛ぶ」
「あの子たちの成長を楽しみにしておられるのだ」
おいおい、ちょっとこの会話は、やばそうだ。
引き返した時だった、立てかけてあったホウキが、バタンと音をたてて倒れた。
「おいっ、ちょっとまてっ」
「待って、今日の撮影に出てもらうお客役のモデルさんなのっ」
京子がフォローに割って入った。
「客の役?」
「あの子たちを物色するお客の役をお願いしたのっ」
「舞香ちゃんの絵を買って貰った方、へんな人じゃありません」
「失礼、そうでしたか。しかし今回の撮影は、色々不手際がありまして。せっかくお越し頂いきましたが、一旦中止と、」
「いや…」
「この撮影を、成功させないと、京子の作家生命はここで終わります、人助けと思って、明日も撮影にご協力いただけませんか?」
「お願いします、申し遅れました、水無月と申します」
「別に明日も明後日もいいですよ、僕は何をすれば?」
「私が、監督をします。京子は撮影に専念させる、貴方は私が言うようにして下されば、十分です。」
「もちろん、報酬は二日分お支払いします。宿泊や飲食費用は、こちらでご用意させていただきます」
正直一時は、お払い箱かと思った。
まだ始まってもいないが、あの子たちにすっかり魅了された俺に、ここで帰れというのはあまりに酷だ。
しかも明日もここに居て良いのは、時間を持て余す俺に取っては、ラッキーだ。報酬も倍出すという条件に、二つ返事で快諾していた。
今日の俺の予定は中止、俺は控室の旅館に戻った。
「あ、おじさま、お帰りなさい~」
「おかえりなさい~」
「お仕事おつかれさま~」
玄関で靴を脱いでいると麻由子とらな、まほが走ってやって来る。
俺の隣に正座して座ってきたので、思わず「ん?かしこまってどうした」と聞き返す。
「え~男の人が外から帰ってきたら、ちゃんと座って、お疲れさまを言わないとダメなんだよ~」
麻由子が「はい」といって、背広を掴み、袖を持って脱がせてくれた。
「こ、こんなの初めてだよ。よく気が利くな」
隣の部屋にかけておきますね。
そう言ってる間にも、らなとまほが俺の靴に手を伸ばして、向きを整えていた。
「ねぇ、おじちゃんっ、一緒にお風呂行こっ」
「あ、らなちゃん、ずるいっ、まほもお風呂行くっ」
「おじさま、大人気ですね」
麻由子がにこにこと笑顔でいってらっしゃいと送り出す。
二人に手を引かれて大浴場にいく、旅館といっても山あいの山荘だ。
やはりというか混浴風呂だった。
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