「悪いのは舞香なのっ、だからおじさんを責めないでっ」
「まさか、こんなことになってるとはな・・・」
一呼吸置くと水無月から怒りの表情は消え、半ば呆れたように話し始める。
「今日知り合って、まだ半日だろ、あんた何者だよ。」
「舞香も麻由子も他の子たちも、皆あんたに懐いて、挙句の果てが、これじゃあな…」
「舞香、おまえがいないんで先生の機嫌がすこぶる悪い」
「すぐ身体を洗って衣裳部屋に行け、他の子もいる。」
「あんたに頼める仕事は、無くなった。あの娘が直接することになったからな。」
「今のことは黙っておいてやる、お前のためじゃない、あの子たちを守るのが俺の務めなんだ」
「食事は部屋に運ぶように言っておく、金もいっしょにな」
「じゃ朝になったら、立ち去ってくれ」
とぼとぼと自分の部屋に戻る。
あの子たちに会えないのか、急に例えようのない不安と寂しさが襲う。
大切な人を失った時に感じた同じ喪失感だ。
もう会える機会は無いだろう。
部屋で一人黄昏ていると、少女たちの声が聞こえて来た。
古典的だが、慌ててコップを充てて聞き耳を立てる。
「舞香ちゃん、聞いた?撮影、おばさまに変わるって」
「京子さんの撮影じゃお遊戯会なんだって」
「楽しかったのにね」
「みんなーもう着替えは、終わった?」
「京子さん、さっきのところで撮影するんですか?」
「ごめんね、私もわからないの、一応助手としているから、何でも聞いて」
「でもまさか、今からとはね。」
「舞香も璃子も全然休めないね、ごめんねー」
暫くすると声が小さくなっていった。
そっと部屋を抜け出し、外に出る。
ぐるりと建物をほぼ一周して、中庭に入った。
さっきまでいた広間の全体が見渡せた。
部屋の中央には、腰かけが置かれ、璃子、麻由子、舞香の三人が座っている。
らなとまほは、先生と呼ばれるオーナの横に正座して座っている。
水無月も傍に座っているが、オーナーの娘の姿は見当たらなかった。
それともう一人、鋭利な刃物のような佇まいの中年の男。
始めてみる顔だ。
京子は、カメラを手に時折、シャッターを切る。
3人は、制服を着ている。
璃子は、小学生が着る丸襟の吊りスカート
麻由子は、ブレザー、舞香は、セーラー服
オーナーの趣味なんだろう。
オーナーが水無月の方を向く。
水無月が頷くと、中年の男は、3人に近づいていく。
手には、麻縄が握られていた。
京子の険しい表情が全てを物語っていた。
3人は、男が近づいてくるだけで、怯え竦(すく)んでいる。
真ん中に座る麻由子の胸元に手慣れた動きで二本の縄をかける。
「身体が柔らかいからな、大人と同じ感覚で縛ると外れるぞ」
「はい、わかりました」
「ううーーっ、ううんっ」
苦しくてじっとしていられないのだろう。
小刻みに身体を動かす麻由子
男は手際よく、舞香と璃子の身体も同じように縛り付けた。
「片脚も縛って、吊るしてあげなさい」
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