家に帰り、冷静になると金額のことも確かに大きいが、やはり身分不相応というか、あの絵は、自分が持つよりも、同じ少女趣味の人に広く観て貰った方が、良いのではないかという考えになった。
しかし他の人の手に渡ることを思うと、そんな簡単に結論は出せず、煮え切らない落ち着かない気持ちのまま、寝床についた。
いつもならすぐ眠るのに、なかなか眠れず、まどろんでいたが、気がつくとあの少女が目の前に現れていた。
夢の中の少女は、俺の望むがまま、まさに玩具だった。
可憐で儚い、美しいものを俺は白濁液で汚し、何度も肉棒で打ち付けた。
翌朝、目が醒めると下着が大量の精液で汚れていた。
朝さえも満足に勃たない自分には、俄かに信じがたい出来事で、一旦は諦めた絵の購入を再び考えることにした。
約束の時間の少し前、既に俺は画廊の前にいた。
気持ちは揺れていたが、もう一度あの絵を見て決めようと考えていた。
この日は、招待客しか入れないので、手渡された招待状を必ず持参するよう、主人に念押しされていた。
時間ちょうどに店に入る。
店内は、パーテーションで区切られていて、前とはまるで違っていた。
明かりもついており、営業をしているのは間違いないが、誰もいない。
思わず、すみませんと声を上げる。
「はーいっ」
若い女性の声だ。
この前の男ではないのか、嫌な予感がする。
「ごめんなさい、お待たせしましたっ」
「あっ」
出て来た女性は、セーラー服を着ている。
若い。正真正銘、現役の女子高生じゃないのか?
少女の澄んだ真っ直ぐの瞳が目に飛び込んできた。
「えっとごめんなさい、招待状とお名前を伺ってもよろしいですか」
招待状と名簿と照らし合わせている。
参ったな、まさかこんな若い娘にこの絵を買おうとしているのが知られてしまうなんて。
それになんだ、俺を見て、あっ、て叫んだけど、まさかあの絵を買おうとしている客とわかったんだろうか。
「え、えっと今日、川口先生とお会いできるのかな、前にこの画廊のご主人と話をしたんだけど。」
「ん、川口先生?お父さんならこないよ、私がお父さんの代わり」
「や、安くはならないですよね?って話してた方ですよね、私、そこから見てたの。画廊で値切る人初めて見たわ」
「もーおかしくって、腹筋が壊れるかと思っちゃった。」
ずけずけと人が嫌がることをあっけらかんと言うデリカシーの無い子だ。
しかしそんなセリフも女子高生がいうのなら許せてしまう。
この子は、人懐っこくも、どこか妖しい雰囲気が常に漂う。
「あの絵の元ネタね、私が撮ったの」
「あの子の名前、特別に教えてあげるね。舞香ちゃんっていうの、凄くかわいいでしょ」
実在した少女という考えがぽっかりと欠落していた自分には、俄かに信じがたいひとことだった。
「黒いニットの少女、舞香ちゃん」
そう言うと突然僕の横に来て、「ね、耳貸して」
僕の耳に少女の息がかかる。
甘い匂い。
「あの絵、絶対買った方がいいよ。500万でも売ってくれって人ザラにいるから…」
「それに」
「それに?」
「今、私も個展に向けて作品撮ってるの、オジさん、私の作品のモデルになって。」
「あの絵を見て、震えてたあの表情が欲しいの」
「バイト代も出すから、絵の足しにして。お願い」
「お、俺がモデル?」
「作品名は、もう決めているの。青楼(せいろう)少女館」
「少女だけの娼婦の館なの」
「舞香ちゃんもモデルになるのよ」
俺は、そのひとことで、体がぶるぶると震えているのがわかった。
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