「京子さん、着替えるので、先に行きますね、璃子ちゃんも、いっしょに行こっ」
そう言うや、その場を離れる舞香
「あ、ほんとだ、ヤバい支度しなきゃ」
部屋で休む間もなく、広間に行くと、昔の社員旅行のような雰囲気だ。
膳の数は、13、思ったよりも大所帯だった。
俺を入れてモデルが6人、京子と水無月、スタッフ、そしてオーナーとオーナーの娘
オーナーは、かなりの高齢に見える。
入り口で一人一人に声を掛け、労をねぎらう。
もっと高圧的な人物を想像していた俺には、少し拍子抜けだ。
娘は、30代半ばぐらいだろうか、身に着けるものからして、金の掛かりそうな女に見えた。
座る席だが、端役の俺は、すすんで隅に座る。
見知らぬ人からの接待など性に合わない。
「麻由子、ここよ」
オーナーの娘が麻由子をオーナーと自分の間に座らせようと声を掛ける。
「舞香は、こっち」
オーナーの隣へ誘導しようとするが舞香は、首を振る。
「いい。今日は、こっちに座る」
そういうと、俺の横に来る。
「あ、・・」
それを見る麻由子の足が止まった。
「麻由子、どうしたの、こっちいらっしゃい」
物悲しそうに俺を見て、オーナー達の席に座る麻由子。
「この方が、二人が良く見えるでしょ」
「しょうがないわね、後でこっちに来るのよ。」
らなにまほ、璃子もやってきて、オーナーと娘に近い席に座らされる。
京子と水無月の態度からも、今実権を握っているのは、娘で間違いなさそうだ。
「私が隣でうれしいでしょ?」
目をキラキラさせて舞香が話し出す。
(おいっ、声がでかいぞ)
「さっきは、面白かったな。バァカ、何がバカだ、え、え、ぇ・・」とあっけにとられた俺のモノマネをする舞香。
「口がポカンと開いて」
「鼻の下伸ばして」
「あの顔、おもしろかった~」
「怒ってる。いい大人が、子どもみたい」
「今日は、私の絵を買った人が来るっていうから、会うの楽しみにしてたの」
「なのに、いきなり玄関のシーンだもん、もう恥ずかしかったんだから」
「あんなにじろじろ見るなんて。」
「あ~~私の絵で何してるんだろうね~ちゃんと飾ってるの?」
「声がでかいって、ちゃんと玄関に飾ってるよ。」
「ふ~ん、じゃ、絵の私にただいまとか言ってるの?」
「さあな」
「さっきのが絵の元ネタだよ」
「え?」
「上半身の絵だけど、手は、あんなふうになってるの」
「帰ったらよく絵を見て、手が少し見えてるから」
「後、冷却スプレー」
「ん?」
「撮影中にシューっ、シューって、何度も胸にスプレーするの。」
「信じられる?凍るんだから。ズキズキ痛くて、最後泣きながら撮影したの」
(あれは、そうやって勃たせてたのか)
「あれから乳首が赤いの、さっき見たから知ってると思うけど」
「おっぱい大きくならないかなぁ」
そう言いながら胸に手を当てる。
「男の人に揉んで貰わないと効果ないのかなぁ?」
視線は俺の股間にいく、勃ってないか気になるようだ。
オーナーや娘の挨拶、乾杯と昭和の宴会さながらに、退屈な時間が始まった。
舞香も呼ばれ席を立つが、すぐに戻って来た。
「あ、良かった。隣空いてた。」
「はい、ビールどうぞ~」
「あ、溢れるっ、飲んで飲んでっ」
悪戯でもするようにビールを注ぎ続ける舞香
「お、おいっやめろって」
仰け反るとコップのビールをぶち撒いた。
「もう~びしょ濡れになったじゃないかっ」
「ご、ごめんなさいっ」
「あ~いいよもう、ちょっと拭いてくる」
俺としては、抜け出す口実が出来たので、正直それほど嫌ではなかった。
脱衣場で着替えていたら、部屋の灯りが突然消えた。
「ごめん、人がいるんだけど」
「知ってるよ」
その声は、舞香だ。
「ふたりっきり作戦、大成功~」
そう言うと舞香は浴衣を脱ぎ始めた。
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