その次の夜、僕たちは家族会議を開いた。議題は『あゆみのお腹の子をどうするか?』だった。
しかし、当のあゆみは最初から『産みたい』の一点張りだった。
「お兄ちゃんのこどもなのに、殺すなんて絶対いや!」
あゆみはそう言って譲らなかった。せっかく、希望の高校に入学したばかりなのに。
結局あゆみは、通信制高校に編入し、家で母と一緒に出産に備えることになった
ふたりになった時、妹に
「後悔しないか?」と聞いてみると
「私の人生の目標は、学歴とかじゃなくて、幸せな家庭を持つことだから」
だそうだ。
物心ついた頃から、血の繋がった家族と暮らしたことのないあゆみにとっては、その通りだったのかも知れない。
あゆみのお腹がいよいよ大きくなり、お袋が赤ん坊の産着など、出産の準備を始めたので、僕もできることは何でも手伝った。お袋とふたりで手を動かしている時だった。お袋がしみじみと
「最初にあんた達を会わせたときから、なんとなくこうなる気がしてたのよね」と言った。
そういえば、児童養護施設からあゆみを斡旋してもらった時、他にも何人か候補がいたらしい。その中からお袋が、写真を見て選んだ。もしかしてその時お袋の脳裏に、僕とカップルになるかも知れない、と言うイメージがあったのかも知れない。
だとしたら僕とあゆみは、最初から『つがい』だったことになる。
顔も頭もパッとしない僕のために、母がこんなに可愛い妹を家に迎えてくれたのだとすれば、感謝しかない。
その一方で、僕はあゆみとカップルになるために、これといった努力をしていない。ただ、あゆみの境遇が可哀相だったことと、あゆみが美少女だったから、普通の兄以上に優しくした。それだけだ。
そんな僕を、あゆみは愛してくれた。別の部屋を与えられてからも、いつも僕の部屋にいてくれた。その想いに僕は全力で答えなければならない。
幼い頃からめおとになることを決められ、雄雌が同じ籠で育てられるつがいの鳥のように、僕たちは同じ部屋で育ち、そのまま夫婦になろうとしている。この幸福がいつまでも続き、あゆみの『人生の目標』が叶えられるために、努力は惜しまないつもりだ。
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