中学入学後、運動部に入部したあゆみは、2年になるクラスと帰りが遅くなり、それでも帰宅するとすぐに宿題を持って僕の部屋に来てくれた。
僕が宿題を手伝ってやり、その後僕のベッドでゴロゴロするのはいままで通り。
違っていたのは、疲れているのか、ゴロゴロしている内に眠ってしまうことが多くなったことだ。
いつもは、11時を目処に、肩を揺すって起こして自分の部屋に戻らせた。
しかしその日、僕はこっちに背を向けて眠るあゆみを起こそうと、肩に手を触れようとして、ふと気づいた。
『よく寝てるな…』
僕はあゆみを、性の捌け口にするのは絶対嫌だったが、告白する度胸がない以上、その柔らかそうなお尻や、小振りに膨らんできているおっぱいに触ってみたいという欲望を、どこへ持って行っていいか分からない。
しかし、眠っている間、ほんのわずか、どの位の柔らかさかを確認するだけなら、許されるんじゃないか?
悪魔の囁きだった。
『胸か?お尻か?』
どちらに触りたいかより、どっちの方が、触ってもあゆみが目を覚まさないか。僕は迷った。
どっちつがずのまま、手だけが勝手に動き、タンクトップの裾を少し捲って指先で素肌に触れた。
予想をはるかに超えた柔らかさ!思わず顔を近付けると、汗の香りにクラクラした。
上か、下か。迷う気持そのままに、指先を上下させて背中をなぞっていると、不意に肩越しに
「いいよ。触っても…」
あゆみの声が。
僕は驚き、咄嗟に手を引っ込めた。
固まったまま、脳をフル回転させて考えた。これはどういうことだ?
あゆみはおそらく初めから気づいてた。なのに、眠ったフリをした。恐怖からではないだろう。触られたい?あゆみが、愛のない愛撫に快感を求めるような子じゃないことは、よく分かっている。そもそもなんで、こんなに僕の部屋に入り浸るんだ?
これらのことから導かれる答えはひとつ。
『あゆみも俺のことが好き』
それしかない。
僕はあゆみの耳に口を近付け
「あゆみ、愛してる。」と囁いた。
するとあゆみの背中がフルフルと震え出し
「遅いよ!ずっと、待ってたのに…」
と言った。
僕は天にも昇る気分だった。
「ごめん。何度も告ろうと思ったんだ。でも、自信がなくて。か、顔が…」
するとあゆみは
「そんなの!関係ないよ!」
と怒ったような口調で言った。
「…あたし、もらわれっ子だから、この家で受け入れてもらえるか、ずっと不安だった。でもお兄ちゃんはずっと優しくて、最初だけじゃなくて、何年経っても部屋に居させてくれて。それだけで十分なのに…」
僕が自然な気持であゆみと接していた態度が、あゆみにとっては恋心に変わるほど、うれしいことだったらしい。
あゆみの両親は事故死し、彼女を引き取ってくれる親戚もいなかったと聞いた。たった3才でそんなことになり、どれだけ心細かったことか。僕なんかには想像も付かなかった。
僕はあゆみを抱き起こし、きつく抱きしめ、キスをした。
「ごめん、俺、何にも分かってなかった。」
と言うと、あゆみはふーっとため息をつき
「こうしてハグしてもらってると、すごく安心する。やっと…」
と呟いた。
この時のあゆみの『やっと』という台詞。僕はこの時、好きな男とやっと恋人同士になれる、という意味だと思っていたが、後で聞くとそれだけじゃなかったようだ。あゆみは僕への恋心を意識して以来、『この家の跡取りである僕と恋仲になれば、今まで以上に安心して暮らせる』と考えていたらしい。
同じ家族でも実子であれば、よほどのことがなければ家族でなくなることなどあり得ないが、養子として迎えられたということは、親の都合で施設に戻されることもあり得るということ。僕の親がそんなことをするとは思えないが、あゆみの中ではずっとこの不安が拭えなかった。
14才の少女が、そんなことを考えながら暮らさなければならないとは。
僕はあゆみからこの話を聞いた時、改めて『守ってやらなきゃ』と強く思った。
僕は感動に震えながら、ずっとあゆみを抱きしめ続けた。『もう今日は、これで満足だ。これで終わりでいいや』正直、そう思っていた。
しかし、しばらくそうしていると、あゆみの方から
「続きは?」
と聞いてきてくれた。
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