香帆ちゃんは、今どんな気持ちでいるのだろう、今にも、香帆ちゃんのお父さんが怒鳴り込んでくるのではないか、そんな不安が幾度なく頭をよぎります。
明日は、ケイタを説得して、なんとしてでも阻止しなきゃ…。
そう決めて布団に入りますが、昼間の香帆ちゃんの喘ぎ声や、初めてのディープキス、ケイタに開脚され、あそこをぐりぐりと責められて悶える姿を思い出すと、一晩中疼きがおさまる事はありませんでした。
結局、いつも通りに起きることが出来ず、昼休みにすぐケイタの教室に行きましたが、姿が見えません。
居そうな場所に行ってみますが、見つけることが出来ず、教室に戻りました。
隣の席のマサシが、「おい、さっきリアルちずるがうちの教室を覗いてたぞ」と話しかけてきます。
リアルちずるとは、男子だけが使う香帆ちゃんの別名、言わば隠語でした。
去年の夏まつりにパステルグリーンのウイッグを着けて、テレビの取材を受けた香帆ちゃんをみた男子の多くは、当時絶大な人気を誇っていた南〇ちずるというアニメのキャラクターに重ねて、その名前の方が知れ渡っていました。
「えっ、いつ?」
「昼休みになってすぐ。お前、真っ先に出ていったから、会いに出て、すれ違いかって皆で話してたけど、違ったか。」
絶対昨日のことだ、あのままで済むはずがない、それを伝えに来たんだろうか。
気になってもう一度、廊下を見渡します。
香帆ちゃんの姿は無く、香帆ちゃんの教室に行くべきか、迷っていました。
「僕ちゃん…」
「えっ」
声の主は、ケイタでした。
「あ、ケイタ、どこにいたんだ…」
「さっきまで香帆ちゃんと会ってて…」
「えっ」
「絶対に内緒だよ。今日だけど、ハナちゃん家じゃなくて、香帆ちゃん家に来てって」
「4時ちょうどに、勝手口の鍵を開けるから、チャイムもノックもしないで、入ってって」
「誰にも見られないようにって」
「そ、それ本当に香帆ちゃんが?」
「香帆ちゃん以外誰がいるんだよ、じゃ時間ちょうどだから、よろしくねッ」
香帆ちゃんが、そのような事を言ってくるはずがない。
ケイタが何かしたとしか思えない、しかも時間も場所も決まってる。
やはり自分も行って、ケイタを説得するしかない。
6年生は、分担で学校内の見回りをして下校するので、4時というのは、ぎりぎりの時間でした。
帰宅して、すぐに家を出ます。
(誰にも見られないように)
(チャイムもノックもしない)
呪文のようにブツブツとつぶやきながら、香帆ちゃんの家を目指します。
普段来ることのない、勝手口に向かうと、ケイタがすでに来ています。
「よかった、もう来ないのかと思ったよ。」
少し走ってきたのもあるけど、それ以上に、ここに来ると心臓がドキドキして、それはどんどん速くなってきます。
時計を見ると、4時ちょうどでした。
どこかの家から聞こえてくる電話のベルの音、静かにしていると色んな音が聞こえてきます。
鍵は開きません。
香帆ちゃん、ケイタのやつを騙したのかな。それか、まだ帰ってないとか。
それなら心配しなくてすむ。
そんなことを考えはじめた時でした。
カシャッ
冷たく乾いた音が響きました。
急にドキドキして、それでも僕が先に立ち、ドアノブに手をかけます。
震える手で、ドアノブを回し、おぼつかない足取りで中に入りました。
「あっ」
正面に香帆ちゃんが立っています。
普段ミニスカートは履かないのに、目の前の香帆ちゃんは、淡いピンク色の丈が極端に短い、超ミニスカートを履いていました。
ケイタが、わあっと声を上げ、「これっ、去年のお祭りの時のだよねっ、やっぱりリアルちずるって言われるだけあるなぁ」
「身長も凄く伸びたから、アニメを越えちゃったんじゃない」
香帆ちゃんは、両手でスカートを覆うようにして、恥ずかしそうに頬を赤らめています。
僕は、失礼だと思いながらも周囲を見渡します。
お世辞にも、小綺麗に整頓されているようには思えませんでした。
香帆ちゃんは、お父さんと二人で暮らしているのは、何となく聞いていましたが、実際に見ると香帆ちゃんのイメージとはずいぶんかけ離れていました。
「えっと、どこに行けばいい?」
「こっち」
いつもの消え入るような声で先を歩く香帆ちゃん。
廊下から階段を上がります。
階段の踊り場には、紐で束ねられた成人雑誌などが無造作に積んでありました。
視線を上に向けると、すらっと伸びた脚を手で隠す仕草をする香帆ちゃんと成人雑誌にドキドキしていました。
「うわ、すげっ、エロ本だらけじゃん」
二階の一番奥、そこが香帆ちゃんの部屋でした。
ドアを開けると、優しい花の香りが漂ってきます。
中は、女の子らしいピンクやレースのカーテンなどがあり、ここは別世界のようでした。
飲み物を用意してくると席を外すと、正直僕は、香帆ちゃんの家に招かれただけのように感じていました。
ケイタもハナちゃんとは違う、香帆ちゃんの家なので、口数も少なく、大人しく見えます。
香帆ちゃんが、ジュースを持って戻ってきます。
普段口にしたことのない搾りたての桃ジュースのおもてなしに、僕はそれだけで、昨日感じた嫌な気持ちも忘れていました。
飲み終えると、急に会話が終わりました。
ケイタが、「香帆ちゃん、どうする?」と声を掛けます。
もう一度「香帆ちゃん…」と声を掛けると、飲み終えたコップを机に置き、窓を閉めて、遮光カーテンを拡げました。
部屋が薄暗くなります。
「少し暑いけど、ごめんね。」
「恥ずかしいから、向こうを向いてて」
そういうと、薄手のブラウスのボタンに手をかけ、服を脱ぎ始めました。
突然のことに僕は気が動転していました。
向いた側には、姿見用の鏡が置いてあり、見てはいけないと強く念じても、断ち切ることが出来ず、気がつけば、一部始終を見ていました。
途中で香帆ちゃんも鏡の僕たちの視線に気がつきましたが、目を伏せるだけで、そのまま服を脱いでいましたが、恥ずかしいのか、スリップ姿になると、顔を手で覆うようにして、仰向けになりました。
「二人いっしょは、怖いから」
「お願い、一人ずつ」
「乱暴はしないでね。」
香帆ちゃんの声が震えていました。
二人、顔を見て、目で合図を送ります。
(じゃんけん1回な。)
勝負は、ケイタの勝ちでした。
時間は30分、僕は、部屋の外で待つことになりました。
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