御茶の用意をしてくれた多田奥さんは元モデルで、70歳を越えているのに50代半ば位に見える。
紅茶は多田先生のこだわりの逸品、ケーキは近くの牧場で作ったチーズケーキだ。美味い。
俺は作品を見渡しながら「子供と大人の肉体が、これほどビジュアル的にマッチするとは思いませんでした」
と言うと多田先生は「セックスしてる時は分からないと思うよ。お互いに夢中だからね」と笑う。
ソファーからも絵が見える。三十歳は年齢差のある男女のキスしてる顔が、一枚の絵に沢山描かれてる物。
十人十色の顔が歳の離れた異性の唇を吸う。これだけ多くの顔があると異様な光景の様に思えるのだが。
不思議そうな顔の俺を見て多田奥さんが「フフ。ミスマッチの美学よ。例えば鰹にマヨネーズみたいな。フフ」
確かにそうかもしれない。どんな少年少女も天使の様に無垢で純真。そして美しくしい。
逆に熟年男女は、内面から包容力や慈愛が表情に滲み出ていて何とも云えない魅力を感じた。
俺は「そうですね。でも多田先生の力量があっての絵の魅力です。それを最大限に引き出してるという意味では」
妻も「素敵な絵ですねぇ」とウットリ見とれている。これだけ人を引き込む絵が世に出せないのが残念だ。
ブーブーブーブー旧式のブザーが鳴る。多田奥さんが対応すると二組の夫婦が入ってきた。
其々、男の子と女の子を連れて来ている。邪魔をしてはいけないと俺は席を立とうとする。
それを制する多田先生「折角だから見学してったら。電話で了承もとってるし、大丈夫だよ」
二組の夫婦もそれは理解してる様で挨拶してきた。俺も「フリーライターの関谷です。よろしくお願いします」
と頭を下げる。女の子を連れた夫婦は横山夫婦、女の子は早苗ちゃんだ。
「横山です。アパレル関係の社長をしてます。家内はデザイナーです」
二人とも四十歳は越えているだろう。旦那さんはチャラ男がオッサンになった感じで、日焼けした長身だ。
奥さんは、壇蜜の様な妖しい雰囲気の女性で背も高い。ハーフらしく欧米人の様なグラマラスな肥方をしている。
早苗ちゃんはショートヘアで顔もボーィッシュな小学校高学年位の女の子。貧乳だがスマートで足が長い。
もう一組の夫婦は川俣夫婦。五十路前後で旦那は割烹料理屋を経営している。
背は低いが骨太で体は広く、角刈りの貫禄のある男性。奥さんはパーマで髪をまとめた女性だ。
キツい感じの顔立ちだが、全体的にふくよかで年齢相応の丸びを帯びた身体つきだ。喋り方に物静かな印象がある。
男の子は陽介君で、中学生位の男の子。髪は長く面長で、体型は中性的な感じ。痩せているが柔らかそうな感じだ。
川俣さんは「関谷さんは子供との体験。まだ始めたばかりだと聞いてます。この世界は奥が深いですよ」
そう言うと勝手知ったる我が家の様に、奥へ進む。他の人達もそれに続くので付いて行く。
引き戸の先はアトリエになっていて、描きかけの絵や画材道具が散乱していた。
その先には白いシーツが目立つベッドや椅子、それにマットを赤い布地で空間まで覆うコーナーもあった。
休憩所みたいな場所もあり、リラックスして絵のモデルができる環境もある。
夫婦と子供達は、隅に設けられたシャワー室に入っている。セックスをどう描いてるのかが気になる。
それも高名な画家の描く大人と子供の情交だ。尚更胸が高まる。
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