悠優「あ、あああのあの・・私って何か
失礼な言葉を言いました?」
(やっちゃった?..ひええ~..やっぱり?思いっきり?)
彼女は未だ彼に対して、意識的に敬語などを交えて会話をし続けている。
だが彼女のその行為自体は無意識な種類のものであった。
宏之「あっ! ごめんごめん!」
「笑ったりしたら君に失礼だよね」
「そもそも君の本音を聞き出そうとしたのは僕の方だもんね」
彼は場を改めた後に重く漂う空気を変える為、彼女の肩を抱いて居間のソファーへと誘う。
宏之「でも・・」
彼は口ではそう言いつつも密かな笑いを堪え切れない様ではある。
そんな彼に対して彼女は明らかな不満を口にする。
悠優「宏之さん・・酷いです」
「そんなに笑わなくてもいいのに」
彼女の不満を受け取って、彼も早々に反省をする。
宏之「ああ、ごめん! 本当にごめんなさい」
「でも・・でも君の喋り方も・・」
「ちょっと・・ほんのちょっとだけ
さみしかった・・かな?・・」
「ああ! 飽くまでもこれは僕の我儘なんだけどね」
「あまり気にしないで、ね」
悠優「気にしますぅ~・・(ぷんぷん)」
「あ、でもなんで・・何故さみしいんですか?」
彼女は寂しいと言った彼の言葉が気になった。
宏之「僕は・・安心したんだ」
「君はあの頃と何にも変わってないってね」
悠優「・・変わって、ない?・・」
宏之「そう! 君はあの頃のまま!」
「真っ白な無垢のままの姿」
「だから余計に・・・」
悠優「・・余計に?・・」
宏之「敬語を話す君が遠くに感じられた」
「それだけ・・ただそれだけのこと」
彼の寂しそうな笑顔が彼女の胸に突き刺さる。
悠優「わたし・・私って・・」
「無理してたのかな?」
宏之「えっ?」
悠優「可愛い私を貴方に見て貰いたくて・・」
「・・無理をしていたんですか?・・」
宏之「・・悠優?・・」
彼の言葉に触発されてしまった彼女の心は、無垢と云うキーワードに囚われてしまう。
悠優「私は可愛くなんて無い!」
「ううん! ちがうちがう!」
「私は酷い女なの」
「サイッテーなの」
宏之「・・どうした? 悠優?・・」
興奮する彼女は彼に再会する前に起こった出来事をカミングアウトしてしまう。
悠優「私はTVに出たくて或る人のところへ行ったの」
「TVに出る事が出来れば、或いは・・」
「でね・・その人はいきなり服を脱げって言うの」
「脱がなければTVには出さないよって」
彼女の衝撃的な告白に彼の心も強く反応する。
宏之「悠優、分かった!・・分かったから」
だが彼女の告白は止まり様がなかった。
悠優「それからその人はキスをさせろって」
「私が嫌って言ったら・・」
「じゃあ、じゃあキスはいいから」
「えっちをさせろって・・」
悠優「悠優、分かったから・・
僕が変な事を言うからいけなかった」
「だから・・」
悠優「でね・・私ったら・・
私ったらTVに出たくていいですよって言っちゃった!」
宏之「悠優っ!!」
一直線に彼の方を向いて心を凍らせたまま、ポロポロと涙を零す彼女の顔は、行き場のない悔しさに満ち溢れていた。
悠優「最低でしょ?」
「たかがTVに出たいだけで私は・・」
宏之「やめて! いいから! もう分かったから!」
悠優「信じて・・信じて貰えないかも、だけど」
「私は逃げたの!」
「訳が分からなくなって」
「裸のままで・・」
宏之「悠優!!」
彼は棒の様になって立ち尽くす彼女を抱き締めながら、己の放った無責任な言葉を酷く悔やんでいた。
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