熱く視線を絡ませる二人はどちらからともなく誘い合い、身体を椅子から高く浮かせてテーブル越しに柔らかな唇同士を併せて行く。
宏之(ああっ!!..これだ! この感触!)
(..悠優の唇って..)
(そう! そうだよ こんなカンジだった)
(..柔らかくて、甘い香り..)
(君は変わっていない..何もかもがあの頃のまま..)
悠優(ひろゆきさんの..くちびる)
(あったかくってやさしいな)
互いの唇をリアルに感じ合いながら、二人は長かった空白の期間をゆっくりと、しかし確実に埋め合わせ始める。
宏之「・・悠優・・僕は一生、絶対に君を離さない!・・」
悠優「・・わたし、も・・わたしもおなじ・・」
耳をを澄ませれば近くの海から波の音が聞こえて来そうな程に静まり返った部屋の中で、互いの心臓が発する沸き立つ様な脈動の波音だけが響いている。
そして正にそんな気配が感じ取れるまでに、彼と彼女の切ない胸の内はドキドキと早打ちを続けている。
悠優(でも..もしかして..)
(ほんとうにだいじょうぶ..なのかな?)
彼女の脳裏には一抹の不安がよぎる。
悠優(わたしは..わたしって
大人になっちゃったんだよ?)
(ねえ? それでもいいの?..ひろゆきさん)
そんな彼女が否が応でも思い出してしまう数年前の記憶。
更にその記憶から蘇って来る、彼との鮮明な初体験でのやり取りが、次から次へと彼女の不安を掻き立ててしまう。
悠優(わたしは..わたしのほうは、どっちでもいいの)
(あなたさえいてくれれば..)
(ず~っと傍にさえいてくれたら..)
思い詰める彼女は愛する彼との一生をセックスレスで過ごす事さえ厭わなかった。
悠優(あなたは..あなたって人は..
大人の女性とはえっちが出来ないんでしょう?..)
だが本当にそうであるならば、これ程寂しい人生は他にあり得ない。
一頻り悩んだ彼女は思い切って一つの結論を導き出して行く。
悠優「あの・・えっとぉ・・」
「・・あのね・・」
「・・・・・」
もじもじと身体を捩じらせながら聞き辛そうに悶えている彼女を見定めて、今度は彼の方が冗談を交えながらストレートな質問をして彼女をアシストする。
宏之「なに? どうしちゃったの?(微笑み)」
「イケイケな今を時めくカリスマモデルさんが
僕なんかを相手にモジモジしちゃって・・」
「らしくないなぁ・・」
「聞きたいことがあるのなら何でも聞いて!」
悠優「う~ん・・聞き難いんだよなぁ・・」
「貴方って起つんですかぁ・・なんてね」
「・・・あ?」
彼に乗せられて全くの不意に何故か口にしてしまったそのキーワード。
更に当の彼はいきなり飛び出した肝心の言葉を聞き逃してしまう。
宏之「えっ? なに? 今、なんて」
悠優「ええっ?!! 私って今なにか言いました?」
宏之「あ、いや・・なんだか立つの立たないのって・・」
「・・・・・」
「・・?!・・え? もしかして君って?・・」
悠優「えっ? なになに?
いったいなんのことでしょう?(あせあせ)」
(ひえ~・・どうしよう?・・まずいよ~)
彼女は思わずはしたない言葉を口にした自分自身を無き者としたかった。
宏之「僕が今の君に・・」
「勃起出来ないんじゃないかって?」
「そう思って?」
「・・う~む、なるほど・・」
悠優「ええ、そうそう!・・ああ、いや、ちがう
あああ、いやや、ええっと、その、えー、あわわわっ(大汗)」
必死になってその場を取り繕うとしている彼女を見て、彼は思わず笑い出してしまう。
宏之「ぷぅ~・・くっ!くっ!・・ははっ! あははっ!(大笑い)」
悠優「ええっ?・・な、なんですか?」
彼女は顔を真っ赤にしていきなり笑い出した彼を見つめる事しか出来なかった。
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