季節は移り変わり街中に在る木々の葉が色づき始めた頃に彼女は18歳となり、飽くまでも会のみでの判断で規定上の私的な成人を果たした。
正確に云えば選挙権が与えられただけの彼女ではあるが、現行法では16歳以上で女性は結婚が可能な為、その社会的な立場から考慮して白百合の会側の最大限の譲歩によって彼女は契約から解除される。
そしてその譲歩を引き出す事が出来た最大の要因は、二人の極めて理性的な行動からもたらされた、会との強い信頼関係に他ならなかった。
するとその期日を超えた直後に、二人に対して会側からの大きなプレゼントが提案された。
宏之「は、はい!・・そう云う事でしたら
喜んでお受けいたします・・と云いますか・・」
「本当なんですね?」
「間違いは、無いのですね?」
彼は突然の大きな喜びの余り、スマホ越しに会側からの提案内容を何度も繰り返し聞き正す。
男「勿論でございます」
「あなた方お二人は充分過ぎる程に耐えられましたね・・」
「会の決定事項はその見事な迄の気概と忍耐力の賜物であり
お二人の話は上層部にまで確実に届いております」
「本当によろしゅうございました」
「担当のワタクシめも感無量であります」
件のスーツの男性はポケットからハンカチを取り出して、電話の向こう側で目頭を押さえている。
宏之「あ、ありがとうございます」
「貴方にもどれだけの感謝の
言葉を述べたらいいものか・・」
「すみません 混乱してしまって・・」
男「いえいえ 私などはどうでもいい事です」
「あなた方の大いなる幸せを・・
輝ける未来の到来を深くお祈りいたします」
「どうか・・末永く・・」
職業上の単なる担当であるスーツ氏までもが貰い泣きして言葉を詰まらせてしまう。
男「それから・・私などの存在は
一刻も早くお忘れになってくださいまし・・」
「一幕の感動を・・
こちらこそありがとうございました」
「それでは失礼いたします」
彼にとっては恩人とも云うべきである、二度と会う事が無いであろうスーツ氏の事が忘れられる筈もない。
静かに去って行った戦友とも呼べる彼の事を想いながらも、彼の意識は次のステップへと大きく飛躍して行った。
宏之「・・海、かぁ~・・」
「そう云えば随分と久し振りだなぁ~」
彼と彼女は自分たちの力で未来への道を切り開いたのである。
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