宏之「う~む・・なかなかリアクションって
無いもんなんだなぁ・・はあぁぁぁ・・」
彼は彼女の開いているブログへと定期的にコメントを寄せている。
宏之「やっぱり話の内容が抽象的過ぎるのかなぁ?」
「それとも名前のsilber necklaceが分かりにくいのか?」
「う~ん・・どちらにしてもこのままでは
一歩も前には進めやしないなぁ・・・」
手詰まり感でいっぱいの彼の心境は、ひたすらに疲弊して行くばかりである。
宏之「やっぱり彼女が成人するのを待って・・待って正々堂々と
行動する方が得策なのかも?・・しれないなぁ・・ふぅぅ・・」
そんな彼の想いを他所に彼女は日々の暮らしに追われる繰り返しであった。
病状が改善して来た母の面倒を見ながらのモデル活動である。
その上、JKとして毎日の授業を受ける。
更には忙しくなる一方のモデルの仕事は彼女のプライベートな時間を刻々と削って行く。
悠優「いや~・・」
「今日は久々の真っ白なフリースケジュールだわ!」
「・・これって何日振りだろ?・・」
「・・う~ん・・」
「・・ま、いっか!・・」
彼女は休日の自宅で母の世話を終えた後、窓を開けて爽やかな風を浴びながら久々に自身のブログやSNSを丹念にチェックしていた。
そんなとき・・。
悠優「・・シルバーネックレスさんかぁ・・」
「そう云えば宏之さんから貰ったのも
このネックレスだよね~・・シルバーの・・」
彼女は彼と離れ離れになって以来、肌身離さず首に掛けているそのネックレスをそっと触りながら、彼との楽しかった思い出を頭の中で綴っている。
悠優「へええ~・・この人ってまるで
宏之さんの様な経験の持ち主なんだ~」
彼のコメントを過去にさかのぼって見て行く内に、彼女の脳裏に一つの疑問が湧いて来る。
悠優「・・これって・・まさか・・」
「・・・・・」
「あ、いや・・そんなことって?」
誰にも悟られない様に上手くぼやけさせているその文章は余りにも二人の経験と思い出に類似している。
悠優「まさかね~・・彼がファッション雑誌に
興味があるとは思えないもんな~」
「TVもあまり見ないって言ってたし~」
「それに私も成長しちゃって
ルックスもかなり変わっちゃってるだろうしね~」
だが、このシルバーネックレス氏のコメントには、あの山並みに囲まれて奥深い森に佇む大きな建物の存在が何度も現れて来る。
悠優「・・ひろ、ゆきさん?・・」
「あなたって・・宏之さん、なの?」
遠回し過ぎる、そのジレンマに満ちた文章からは彼の溢れる様な愛情がところ狭しと散りばめられている。
悠優「・・間違い無い!・・」
「この人って・・彼だ!」
厳しい試練を敢えて選んで自らを無理矢理に世間へと露出させていた彼女の苦労は、今ここに報われて大きく花を開かせようとしている。
悠優「貴方って・・貴方ってもうちょっと
待つことが出来なかったの?・・(泣き笑)」
「・・・・・」
「もう直ぐ・・逢える、のに」
「ほんとに・・本当にせっかちなんだからぁ・・(大粒の涙)」
彼女は自らに強く言い聞かせる様に彼への言葉をつぶやいている。
そしてその後、互いの生命を確認し得た二人は、あと少しの長過ぎる時間にひたすら耐えながらも、温かい想いで心の中をいっぱいに満たして行った。
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