悠望「パパ~・・ねえ・・」
「くるしぃ、よ~・・パパ?」
娘の小さな訴えを聞いて彼はハッとする。
宏之(..そう云えばむかし..)
(悠優にも同じような言葉を言われた?)
彼は愛する彼女を無意識に強く抱き締めてしまった過去を思い出す。
宏之「ごっ、ごめん、ごめん!」
「苦しかったのか?」
「パパが悪かったね!」
悠望「ううん だいじょうぶ」
娘は首を横に振って直ぐに笑顔を取り戻してくれた。
彼は一先ずホッとして娘が差し出してくれたお菓子を一つ頬張る。
宏之「うん! こりゃ美味しいなぁ」
悠望「うふふ(笑) おいしいでしょう?」
そんな娘の笑顔を横目で楽しみながら、彼はゆっくりと雑誌のページをめくり始める。
するとコンビニで確認したインタビュー記事にまで辿り着く。
宏之「ん~・・なになに?」
雑誌の企画であろうその記事には、悠優のプライベートに鋭く切り込んでいた。
その彼女は今やティーン向けのトップファッション雑誌でカリスマJKモデルとして活躍をしていた。
女性インタビュアー『悠優さんって本名なんですよね?』
悠優『ええ、そうです』
女性『可愛らしいお名前ですが、命名されたのはどなたでしょう?』
悠優『確かかなり前に逝った父親だって聞いてます』
当たり障りの無い会話が暫く続いた後に、悠優が読者モデルとしてデビューしたきっかけに話が及ぶ。
女性『〇〇さん(雑誌名)から読モでデビューするには
随分と競争率が高いそうですねえ?・・』
『ご苦労も多かったと推察いたしますが』
『そこでもし宜しければ
その経緯などをお聞かせ頂きたいのですが』
悠優『経緯、ですか?』
『う~ん、そうですねえ・・』
『やっぱり、或る人に私の存在を
知らしめる為って事、かな?』
女性『知らせる?若しくは今の状況を教える?・・ですか」
悠優『はい! その通りです』
インタビュアーは不思議そうな表情で(或いは文章で)彼女へと質問を繰り返して行く。
女性『一体、誰に向かって、ですか?・・
もし差し支えなければお教えいただけませんか?』
彼女は一拍の呼吸を空けてその質問に答え始める。
悠優『それは・・それだけはヒミツです(笑)』
女性『はああぁ?・・なるほど』
『・・では・・』
『それでは敢えて言わせて頂ければ
天国のお父様に向かって今の自分を見せたいとか?』
悠優『ふふっ(笑) そうかもしれません』
女性『そうですか?・・わかりました』
『なかなか謎の多いカリスマモデルさんですね』
悠優『すみません・・こんな答えしか用意出来なくて』
女性『いえいえ!』
『その神秘性こそが貴女の人気の源泉なのかもしれません』
『今日はお忙しいところを誠にありがとうございました』
悠優『こちらこそ! ありがとうございます』
そのインタビュー記事を読み終わった彼は感激で眼を真っ赤に腫らしていた。
宏之「悠優っ! 君って娘は!」
「見つけた・・見つけたよ」
「・・君の事を・・」
彼にとってこれ程の意表を突いた発想とその行動力は他に類を見ない。
そんな彼の心は大き過ぎる感動で、只々打ち震えるだけであった。
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