遅い晩餐を済ませた二人は一つのベッドに仲良く並んで寝そべり、いつの間にか手を繋いだまま深い眠りに就いていた。
宏之(..ゆうゆぅ..)
悠優(..ひろゆき..)
これからこの二人に待ち受けている厳しい試練の連続は、お互いの絆をより強くする為の試金石でもあるのか。
そんな彼と彼女は、只々心満ち足りて幸せそうな表情を見せながら目を瞑っている。
心身ともに穏やかな様子ですやすやと。
そしてそれから瞬く間に数か月が経った。
あれ以来、彼と彼女は月に一度待ち焦がれて逢う度に肌と肌を熱く重ね合わせて、更により強く心同士を結び合わせ、本来の目的である”愛ある子作り“に励んでいた。
そんな或る日の事。
自宅でくつろぐ彼の元に突然の来訪者が現れた。
件のスーツの紳士である。
すると驚く彼を尻目に、男は前置きもなく冷徹な報告を淡々と述べ始める。
スーツ「おめでとうございます 内田様」
「貴方様のパートナーは無事ご懐妊されました」
宏之「ええっ?!! 〇〇さんっ・・本当に?
それって間違いないんですか?!!」
スーツ「はい 母体は至って健康でございまして、お子様の方も
既に安定期へと入った模様でございます」
「大変よろしゅうございましたね」
「ワタクシも、ほっと一安心した心持ちです」
宏之「は、・・はあぁ」
積年の望みであった後継ぎと云う子宝に恵まれて嬉しい筈の彼の心は、自分でも理解し難い程に沈み込んだままである。
そしてその理由は他ならぬ彼女自身の現在の状況が不明であるからなのだ。
彼は無理を承知でスーツの男へと質問をぶつけて行く。
宏之「悠優は・・・彼女は今どんな状況なのか・・」
「少しでも・・ほんのちょっとでも情報が欲しいのですが・・」
彼がそこまで口を開くと男が黙って手で制止して、その後ゆっくりと詳細な説明を始める。
スーツ「心配なさるのはごもっともです」
「ですがこれは会の厳然たるルールなのでございます」
「・・・・・」
「なのですが・・ご安心なさいませ」
「貴方様のパートナーに関しましては”会“が
不断の努力と最大限度の実力行使でお守り申し上げます」
「内田様・・・今暫くの辛抱でございます」
「どうか、どうかご了承を」
スーツの男が表情に表す、その不気味な程の自信に満ちた微笑みと冷酷なまでの落ち着き払った態度にふれて、彼の心は返って不思議なまでに平穏を取り戻して行った。
宏之「わ、わかり・・ました」
「すいません・・取り乱してしまって」
「どうか・・どうかよろしく
彼女をよろしくお願いいたします」
彼は男に深々と頭を下げて彼女の行く末を会に託すのであった。
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