30年間以上に渡って徐々に濃縮されて遂には硬く凝固してしまった彼の異性に対する大いなる渇望。
そして睾丸に閉じ込められたまま行き場を失っていた大量の黄色く変色してしまった精液と、訳も分からずに狭い空間で彷徨い続けては朽ち果てて行った無数の精子たち。
彼は今日、その抱えていた一切の憂いを見事に取り払って、己の全ての熱い欲望を目の前に佇む美しい少女の胎内へと注ぎ込む事が出来た。
更には当初自らの子を孕ませて出産させるだけの存在として捉えていた彼のパートナーは、自分の人生に於いて最高の出逢いである相手だと云う事が判明してしまった。
そんな一連の経験をたった一日で果たしてしまった彼は、その望外な大き過ぎる喜びに戸惑いながらも確実に一歩一歩前進を図ろうとしていた。
宏之「結構、イケてるね この料理」
悠優「はい! とっても美味しいです」
二人は会の用意したテーブルいっぱいの会席料理に舌鼓を打っている。
時刻はもう、日付けを跨ごうとしていた。
宏之「・・悠優・・」
悠優「え? あ、はい?」
「なんですか? ひろゆきさん」
彼女はニコニコしながら箸を休めて彼の表情を伺っている。
宏之「・・君は・・」
「君は会の規則を知ってるよね?」
悠優「きそく?・・ですか?」
彼の深刻な想いを表す表情と複雑な感情を難なく読み取った彼女は、その手に持った箸を箸置きの上にそっと置く。
宏之「・・ここで出逢った二人は・・」
悠優「ふたり・・は?」
宏之「女性が成人するまで・・
大人になるまでは二度と逢っちゃいけないんだよ・・」
悠優「二度と・・逢えない」
パートナーである女性が懐妊した時点で、その二人は一定期間二度と逢ってはならないと云う厳しい規則である。
そしてその規則の事は、彼女も文章の上ではきちんと理解していたつもりではあった。
宏之「だから・・」
「だから君と赤ちゃんは引き離されてしまう」
「・・・・・」
「そして・・そして僕とも」
悠優「・・ひろゆき、さん・・」
彼女が無事懐妊して出産した暁には、会が準備した乳母が彼の下で子育てを実行する。
宏之「ホントに・・本当に酷い話だよね」
「会の規則も・・それに易々と乗っかってしまった僕も」
彼が目を瞑って下を向き、双方にとって過酷な状況に想いを巡らせていると、賢い彼女が努めて明るい声で彼を必死に励まして行く。
悠優「わたしは・・」
「私はいつまでも待てます!」
「自信がある!」
宏之「え?・・・ゆ、悠優?」
悠優「だって・・だって私ってまだ若いもんっ!」
「まだC1だし・・」
「宏之さんがおじいちゃんになっちゃっても
まだバリバリ働けるから大丈夫!・・絶対に!」
彼女は目を真っ赤に充血させながらも軽いジョークでその場を盛り上げる。
宏之(..悠優..君って娘は…)
大人の自分とは比べ物にならない程の繊細な心の持ち主が、敢えて気丈に振る舞って、その大人の自分を励まそうとしてくれている。
そんな彼女の精一杯の気遣いは、彼にとっては宝物以上の価値があった。
宏之「おじいちゃんは酷いなあ!(笑)」
「僕だってまだまだ若いつもりだよ!」
悠優「あっ! ごめんなさい!」
「ん~? じゃあじゃあ”おじさん“?」
宏之「それじゃあリアルなだけに、もっとひどい!!(笑)」
彼は己の眼から自然と流れ出て来る涙をハンカチで拭いながらも、その腕をテーブル越しに彼女の顔にまで伸ばして、宝石の様にキラキラと煌き落ちる彼女の涙を一粒一粒丁寧に拾い集めていた。
※元投稿はこちら >>