ほどなくして夏休みが始まった。そして僕の中での10代前半の絶頂期を迎えた。
漁師の息子である俺は、夏休みになれば基本、毎日漁に連れていかれる。船の上までは連れてはいかれないが、親父たちが帰ってきてとった魚を市場へ運んだりする手伝いを毎日やらされるのです。
中学生ということもあるので労働基準法における雇用者と被雇用者の関係になることはありませんが、お小遣もUPするし、(お小遣いが夏休みは300%増しくらいになる)働くことが苦ではなかった僕にとってはうれしい期間だったのです。
お小遣いが欲しいのは、それはミラも同じだったようで、毎日忙しそうに朝や夕方、家を出たり入ったりしている僕を見て、「なにしてるの?」と聞いてきた時、僕はただの家事手伝いなのに、「バイト!」と返事したことがあります。
それがきっかけで、「私もやりたい」となり、僕とミラは、それから毎日のように朝4時から出航する親父たちの準備の手伝いと、そして夕方は帰ってきた船の掃除やとった魚の処理をしたり、毎日生臭い生活を始めたのです。
ミラ家からすれば、複雑な気持ちだったと思います。聞くところによるとミラの両親は、ピアノ、バイオリン、英語を教えたかったはずなのですが、楽しそうに生臭く、漁師の仕事を手伝っているわが娘に、何か言いたくても何とも言えない。という心境だったのではないでしょうか。
気が付けばミラは僕の家には出入り自由の身となっており、(そもそも家にカギをしたりする家ではありませんが)朝の仕事が終わたら、そのまま疲れて僕の家のリビング的な場所で寝ている。ということも多々ありました。生臭いまま家に帰ったら怒られるし、シャワー浴びたり髪の毛乾かしたり、服着替えたりしたら、もう午後の仕事に出る気がなくなるからだそうです。
ミラは日本食にも慣れていき、新鮮な魚にすりたての生ワサビと、厳選された醤油をつけて食べる事にハマってしまい、それを知った両親から寄生虫検査でマジ病院に連れていかれそうになったw と言ってました。
夏休みのミラの食事は、刺身、煮物、焼き魚、根菜類、漬物という具合に、庶民化していき、我が家の海鮮丼を食べた後は、もうロシア料理は味が薄くて食べれない。と言ってました。
前回と似たような話になるのでここでは割愛しますが、女の子とほとんど、同じ時間を過ごすということで、僕はミラの裸体こそ見たことはありませんが、それに準ずるものには、中学生の思春期真っ盛りの僕にとって、いろいろと物色のタネとなり、僕はそれで充分満足していました。
そして夏休みが終わると、一気に状況が変化していくのです。
それはミラの日本語能力が、日常会話、冗談くらいは理解できるようになると同時に、ミラは日本の女の子と遊びだすようになり、僕との距離は自然と疎遠になっていくのです。
いつかは来るだろうとは思っていた。でもなんだか寂しいな。。。という気持ちと、、それより強かったのが、(ま、、俺みたいな漁師の息子は、あんな美人とどうこうなるっていう事のほうが変なんだよw)と自分に言い聞かせてました。この思考はとても僕の寂しさを紛らわせると同時に、余計に寂しくもさせたものでした。
ミラとの距離が遠ざかり、また男友達と遊びだした僕は、すぐに高校入試がやってきました。
ミラは札幌の高校へ。僕は地元の公立高校へという事で、近所に住んでいるにも関わらず、ミラの姿を見る事はなくなっていったのです。
高校に入る事になると、ミラの存在も頭から消えてました。たまに家の近くであっても、「よ!」 「げんき?」と挨拶を交わすだけで、お互いそれぞれの目的の為に家に入っていくという感じでした。むしろ、変に中学時代に仲良かった分、今更何かを話すのが恥ずかしいという気持ちすら持ってました。
そして不毛の高校生活の3年間が終わっていくのです。異性との体験もなく、、です。
高校時代、とくに問題もなく、休みもなかった僕は、入試試験の点数よりも、安定した内申書のほうで札幌にある、そこそこ有名な大学(わかると思いますけど、いちおう名前は伏せます)に受かる事が出来ました。
そして華の大学生活を送って、僕も漁師の息子から、普通の若者へ見た目も中身も生まれ変わりつつあった時、僕が通っている〇〇〇大学のチアリーディング部において、、「すっげー美人のロシア人いるんだぞ」と同級生から聞くことになるのです。
僕にはロシア人といえば、ミラの面影があったので、「そりゃロシア人だったら美人だろうよw」と答えてました。特になんの興味もありませんでした。
数日後、大学近所の海鮮丼屋で、海鮮丼を食べようと店に入ると、まさに会計を終わらせ今から店を出ようとしている外国人と、その友達と店先でかち合い、、思わず目があった僕とその外国人は、「あれ?? ミラ・・?」 「じょん?」というまるでテレビドラマのような感じで再会を果たしたのです。
それから立ち話をすること数分、、「なんでこんな場所にいるの?」「大学があるからw」「大学ってどこ?」「〇〇〇大学だけど」「うっそーw 同じじゃーん」という感じで会話が進んでいきました。
ミラの家は金持ちなので札幌で一人暮らししている。と言ってました。僕は片道50分かけて通っている。とも伝えました。
そんな会話をしていたら、ミラの連れ添いが、「そろそろ行くよー」とミラに声をかけた事で、、その時にいたミラとその連れ添いの集団の雰囲気を見て、、(チアリーディング部の美人ロシア人って、ミラの事なんじゃ・・)と思い始めました。結果、その予想は当たっていたのですが。
ただ、その時の印象は強烈に心に残るものでした。身長は172か173くらいはあるかもしれません。白い肌、青い目、金髪ポニーテール、細い体躯、それなりにふくらんだ胸、長い脚、、、中学生の時のミラも、そうとうクラスでは群を抜いた美人でしたが、、今ほどのような「オーラ」というものは背負ってませんでした。
日本語も日本人と遜色なく話し、ファッションもちょっと浮いた外国人ファッションではなく、まるで雑誌かなにかから切り抜いたかのような、お姉さんスタイル、、(俺と同じってことは・・・まだ18だよな・・・)と、もう分けが分からなくなっていました。
それから僕は頭の中に、オーラをまとったミラの印象が強烈に焼き付いてしまい、、それからしばらくの大学生活では意識的にミラを避けようという心理が働いていたのです。なぜなら、(あれだけ美人だったら彼氏の一人でもいるだろう。。。ミラが彼氏と歩いている姿なんて見たくもない)ということで、、僕は大学内でミラを見かけても、本能的にそれを避けている自分がいたのです。
それからどれだけの時間が過ぎたか、、余裕で1年以上は過ぎました。
変化があったのは大学2回生の時でした。僕とミラは地元での成人式で、さらなる再会を重ねてしまうのです。
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