正章「・・コーチ?・・」
「・・・・・」
「・・あったかいな・・」
「・・それに、すごくやわらかい・・」
「おんなのひとって?・・いいにおい、だなぁ~」
彼は彼女を抱き締めながら過去に想いを馳せて行く。
出会ったばかりの彼女の印象は、只々鋭く冷たい表情が記憶に残っている。
彼女は記録と勝負に掛けては、己とは格段の意識の違いを携えていた。
正章「コーチ!! 自己ベストが出ました!!」
康子「ええ!・・そうね」
正章「・・あのぅ・・・どうです、か?・・」
康子「でも・・負けちゃったからなぁ~!」
「う~ん・・もうちょっと、かな?」
正章「・・は、い?・・・わかりました・・」
精一杯の努力と集中力で出した記録を喜んで貰えない日が有ったかと思えば・・・。
正章「・・コーチ・・」
「・・あのっ・・負け、ました・・」
康子「正章君!!頑張ったねぇ~!!」
「良い泳ぎだったよ!!」
「よしっ!! 次もこの調子で行こうねっ!!」
無我夢中で泳いだ結果が芳しく無くても、彼女は諸手を挙げて喜んでくれた。
彼にはその意味が全く分からなかったが、次の大会で最高の結果が得られた。
その時、彼は彼女に全てを預けようと決心が就いたのだ。
正章「・・コーチ・・」
「・・あぁ!・・コーチ!・・」
今は逆に、彼女が自分に身体の全てを預けてくれて居る。
彼にはその事実が何よりも心温まり、尚且つ只ひたすらに嬉しかったのである。
そんな彼女の意識が徐々に戻って来る。
彼女は彼の体温を感じながら、自らの想いを少しづつ語って行く。
康子「・・ねぇ・・まちゃ?・・」
正章「あっ!・・は、はい!」
「・・・なん、ですか?・・」
康子「・・まちゃは・・」
「私に・・幻滅、しちゃった?・・」
彼に突然、女の性を迫り、そして純潔を捧げ且つ奪って仕舞った自らの身勝手な振る舞いに、彼女の揺れる乙女心はいずこへと彷徨っていた。
正章「・・げんめ、つ?・・」
康子「・・うん・・」
「・・もうっ、・・元には戻れない、よね?・・」
正章「・・もどれない?・・」
康子「・・だって・・」
「・・だって、こんな酷い事・・」
「しちゃったんだもんっ」
「・・・これじゃぁ・・・」
「・・・・・」
「コーチ、失格・・だよね?」
彼女は彼との縁が切れる事を覚悟して事に及んでいたのだ。
それ程までに、彼女は恋敵の存在に焦り、動揺をしていた。
だが、彼女は得られるであろう最低限の成果を挙げる事が出来た。
それは、彼の子種を自らの子宮に迎え入れる事が出来たと云う事実である。
正章「・・・コー、チぃ?・・・」
康子「わたし!!」
「貴方のコーチを、辞める!!」
「・・・ごめんね!!・・自分勝手、で・・・」
正章「・・コーチは?・・」
「・・・・・!!」
「コーチは、嘘を吐くんですか?」
康子「ええ?!・・嘘って?・・」
正章「コーチは僕を・・・」
「・・僕をオリンピックに連れて行ってくれるって・・」
「・・約束・・した!!・・」
康子「正章?・・なっ、何を言っているの?」
正章「僕はお父さんから嘘だけは吐くなって・・」
「教えて貰った・・」
康子「う、うそ?・・・」
正章「ここまで来てコーチを辞めるなんて・・」
「コーチは嘘を吐いた事になる!!」
彼は毅然とした態度で視線を彼女に向けて、その心の内を全て曝け出している。
そんな彼の姿を見て仕舞っては、彼女の決心もゆらゆらと揺らいで行く。
康子「じゃあ・・それじゃあ、どうしろって云うの?!!」
「最初に貴方を騙したのは私なのよっ?!!」
「・・・・・」
「いまさら・・今更私に・・・」
「何をしろって云うの?!!」
正章「・・ぼくは・・」
「・・僕はコーチから離れない!!・・」
康子「・・まさ、あき?・・」
正章「僕をオリンピックまで連れて行ってくれるまで!!」
康子「・・・・・」
「・・こん、な・・」
「・・こんな酷い女・・でもいいの?・・」
正章「構わないっ!!・・ってか・・」
「コーチしか居ない!!」
「僕と一緒に、オリンピックに行けるのは!!」
康子「・・まさ・・ぁ・・きぃ・・(泣)・・」
正章「・・おねがいします!・・」
「僕を見捨てない、で?・・」
康子「・・まさあ、き・・」
「・・・・・(大泣)!!」
「・・まちゃぁ~!!・・」
正章「・・コーチ!!・・」
「・・・・・」
「・・やす、こ・・さん・・(泣)」
二人の子宮口とペニスの亀頭は既に堅く密着して、互いの細胞を融合させる状態にまで進化を遂げていた。
後は只、彼の遺伝子が彼女の尊い唯一の細胞と統合して新たな細胞分裂を起こして行くだけであった。
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