康子(・・あの頃の、正章は・・)
(・・・・・)
(・・直ぐに泣き出したりして・・)
(・・ホントに可愛かった、な・・)
彼女は彼と出会った頃を思い出していた。
諦めずに根気強く探し続けて、やっと出会った宝石の原石であった。
しかし、彼女自身も又、コーチとしては未だ原石のままだったのかも知れない。
正章「コーチ!!」
「・・僕、は・・」
「仰ってる意味が・・良く解りません!」
「僕の何が駄目なんですか?」
康子「そうじゃないの!!」
「ダメなんかじゃ無くって、方向性が間違っているのよ!!」
正章「ほうこうせい?」
「・・分かんない・・」
「そんなの・・分かる訳ないよ!!」
康子「・・・・・」
「・・私だって・・分かんないよ!!・・」
「・・そんなこと・・」
「だって!・・分かる訳無いじゃない!!・・・
私の身体じゃないんだから・・・」
正章「・・・・・!!」
「・・・・・(泣)」
既に師弟として、切っても切れない仲に成っていた二人は、共に解決の糸口が見つけられない難題に突き当たっていた。
康子「ねっ?!・・・少しづつ・・」
「ちょっとづつ、やって行こう!」
正章「・・・コーチ!!・・・」
康子「私も努力する!!」
「頑張って、色々な文献を調べてみる!!」
「・・ねっ?・・頑張ろう?!!」
正章「・・・コーチ!(泣)・・・」
康子「泣かないの!!」
「男の子でしょ?!!」
正章「・・はい!!・・(泣)」
康子「ほらっ!・・また泣いた~!!」
正章「・・・ごめんなさい・・・」
「・・・・・(泣)」
「本当に・・ごめんなさい!!」
康子「もうっ!泣き虫なんだからぁ~!」
そんな二人の絆は、彼が涙を流した回数だけ深く結ばれて行ったのである。
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