車に乗り込んだ二人は、また長い間無言になる。
しかしその沈黙と静寂は見た目だけの代物で在り、実際の二人は共に心を頻繁に通い合わせていた。
そして、その車の中はとても賑やかな状態であった。
彼は暫くの間、ゆるゆると車を走らせている。
何を探すでも無く。
すると突然、幹線道路沿いに建つ白いお城の様な建物に車ごと消えて行く。
典史「・・雫?・・」
彼はエンジンキーを切って彼女に向かって問い掛ける。
雫「・・・・・」
彼女は彼の言葉に首を廻して視線で応えている。
典史「・・ここってさぁ・・」
「とてもじゃないけど
高級な一流ホテルじゃあ無いよね?!」
雫「・・・・・!(笑)」
典史「それじゃ・・降りよっか?」
彼の冗談に、彼女は一つ、救われる。
二人は車から降りて、手を繋いで駐車場から建物の中に入る。
そして無人で案内された部屋へと進んで行く。
雫「・・・ここって・・こう云う感じに出来てるんだ?・・」
彼女は興味深そうに、キョロキョロと視線を動かしている。
そんな二人が入った部屋は、煌びやかな装飾品に彩られた、割と大きめの空間であった。
雫「なになに!このベッド?!」
「面白~い!!」
彼女は回転する、円形の大きなベッドに興味津々である。
雫「ねえ、のりふみさん・・・」
「・・こんなに大きくて豪華なベッド・・」
「・・それに・・」
「立派なお部屋~!」
「充分に高級ホテルだね!!」
典史「・・しず、く・・」
彼は彼女の居るベッドに上がって隣に座り、肩を抱きながら唇を奪って行く。
彼女の方はと云えば、目を瞑って顎を上げ、彼に全てを任せている。
「ちゅっ! ちゅ!・・・」
相変わらずの小鳥キスでは有るが、二人にとっては大事な大事な儀式の始まりである。
すると、唇を離した彼女が自らの想いを彼に伝えて行く。
雫「・・わたし・・」
「ばかでおっちょこちょいで・・」
「貴方に迷惑ばかり掛けてるけど・・」
「・・・すき・・・」
「・・だ~いすき!!・・」
そして彼は彼女の言葉に反応して、自分の気持ちを伝え始める。
典史「・・僕は・・」
「ちょっと違う!」
雫「えっ?・・」
典史「・・・・・」
「しずく?」
雫「・・はい!・・」
典史「・・あいしてる・・」
雫「・・うんっ・・わたし、も・・」
雫と典史の少し変わった恋は、正真正銘の愛へと変化を遂げて行く。
かくして二人にとっての、本当の意味での初体験が始まろうとしていた。
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