澪からの待った無しである質問に、典史は貝の様に口を閉ざして仕舞う。
そして、その時間が刻々と過ぎる毎に、彼女のイライラは増して行く。
澪「・・・・・」
(もうっ!!)
(早くしてよ!!)
(そんなに悩む様な事なの?!)
(さっさと、どちらかかを決めてよ!!)
彼女は最初の頃は、にっこりと微笑んでいたが次第次第にその表情が険しく成って来る。
彼はその移り変わりを逐一、視線を動かしては確認をして行く。
だが、肝心の結論は何時まで経っても出ず仕舞いであった。
典史「君は一体・・何が目的なの?」
彼が再三口にして居るその言葉を、依りによってこのタイミングで切り出して仕舞う。
すると彼女がその言葉に鋭く反応をする。
澪「目的って!!・・・」
「貴方って人は?・・・」
結局の処、彼女は心の奥では分かっていたのだ。
彼の心は全て雫に在ると。
だが、彼女の女としてのプライドが、その事を簡単には認めたくは無かった。
だからこそ彼女は滑稽な自分を偽って迄、様々な衣装で自らの魅力を強くアピールしていた。
更に自慢の料理の腕を披露して、彼の胃袋迄を虜にしようと張り切ってご馳走まで作ったのだ。
しかし、その全ての努力は徒労に終わって仕舞った。
彼女は今、真の敗北者となって仕舞ったのである。
澪「・・・分かった・・・」
「よ~く分かりました」
典史「わっ、分かったって?・・」
「何、を?・・・」
澪「別に?・・」
「只の独り言です」
彼女は急に以前のクールな状態に戻って行く。
しかし彼の方も散々と迷っては居たのだ。
剥き身の身体で心と心を確かめ合った雫とは別に、長い付き合いの彼女とも言葉では言い表わせ難い感情が有る。
只、その事を伝える術が無かっただけなのである。
澪「私・・シャワーを浴びて来ます」
彼女は、そう一言だけ言って再び姿を消して行く。
彼には最早、成す術さえも無くなっていた。
そして彼女はバスルームでシャワーを浴びている。
止めど無く流れて来る涙と自らの色褪せたプライドを全て、そのシャワーの水で洗い流して仕舞う為に。
そうして再び彼の前に現れた彼女は、既に先程の彼女とは別人と成っていた。
典史「・・花村・・・君は?・・」
彼の前に再び現れた女性は、JC3の乙女である彼女では無かった。
そこに立っている女は、まるで男を簡単に手玉に取る様な娼婦然とした姿であった。
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