北川「桑島クンったら、この大事な時期に
一体何をやっているのかしら?」
彼女たちの真のコーチである北川は典史の通う大学OBであり、且つ超優秀な平泳ぎのスイマーでもあった。
年齢は32歳である。
彼女は短距離の平泳ぎでオリンピックに連続出場して、複数回のメダル獲得に成功している。
そしてその明るい性格と雄弁さに加えて、愛くるしい笑顔にスタイル抜群のルックスを評価されてか、マスコミにも重宝されて今や一端(いっぱし)のスポーツ評論家でも有る。
そんな彼女が見出して育て上げたのが澪と雫であった。
澪「私には全く分かりません!」
「彼らからは何も聞いていませんし・・」
澪は女としてのプライドを以って、彼女らの関係が怪しい事への報告を一切しなかった。
北川「う~ん!」
「仕方が無い、わね!」
「あっ、そうそう!」
「来週にミーティングを開くから、そのつもりで!」
澪「はい!分かりました!」
「あっ、後、正章君はどうなりましたか?」
正章とは典史の弟でC2の水泳選手である。
彼は北川に認められて短距離平泳ぎの選手として活躍している。
澪は同じ平泳ぎの選手として、彼の事をリスペクトしていた。
北川「この間の大会?」
「もうバッチリよ!!」
「水連のオヤジ達も目を丸くしていたわ!!」
澪「やった!!」
「それで、タイムは?」
北川「まだまだよ!」
「世界とのギャップは中々埋められそうに無いわ!」
「まあ、でも早晩、国内には敵は居なくなるかもね!!」
澪「本当ですか!!」
「凄~い!!」
「私、期待しちゃいます!!」
澪はその情報を聞いて一気に心が軽くなって行った。
正章は典史以上の整った顔立ちでC2の男子としては異例の長身を誇っている。
練習では数年前迄いつも澪を頼って、その後姿を水中で追いかけて居た。
そして様々な水泳理論をお互いにぶつけあう仲の良い理論派同士である。
彼女はこの後、彼女自身が知らない内に彼の事を意識し始めて行く。
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