澪「あの~・・・」
「次は私の番・・ですよね?」
彼の背後から声を掛ける少女の姿があった。
平泳ぎ100と200メートルを得意種目とする”花村澪“(はなむらみお)である。
彼女も将来を嘱望される水泳界の若き期待の星である。
身長は158CMと雫より少し高い。
そしてメガネとコンタクトを使い分け、長い黒髪を愛するやや細面の凛々しい雰囲気を持つ美少女である。
彼女は雫の様な激情型とは違って、飽くまでもクールに物事を判断して実行する理論派であった。
「あっ、ああ!」
「直ぐに用意して!」
澪「はい!」
「分かりました」
彼女は淡々と自らのルーティンワークを守りながら、スタート迄の準備をこなして行く。
澪「お願いします」
彼女は彼に一礼をして、スタート台へと登って行く。
澪「よろしくお願いします!」
そして何の躊躇いも無く、自らの決めた一点を只々見つめて居る。
「はい!行くよ~!」
彼の掛け声と共に、彼女はクラウチングポーズを取る。
「パンッ!!」
彼の放つピストル音から即座に反応した彼女は、一分の狂いも無く精密機械の様な泳ぎで100と200の記録を連続して打ち立てて行く。
その彼女の記録は、世界レベル的には見るべきモノは無いが、常に安定して想定内の結果を出し続けると云う彼女なりの戦略が見て取れる。
彼女には他に影響されない、独自のしたたかさと絶対的な自信が有った。
澪「はあっ! はあっ! はあっ!」
「はあっ!、桑島コーチ!」
「何か?・・気になる点は?・・」
彼女の言葉には常に虚飾が無い。
今、起こっている事実のみを冷静に判断して行くだけである。
「な~んにも!」
「いつもの君って事が分かっただけ・・かな?」
「ふふっ!(笑)」
「おつかれさま!」
澪「はい!お疲れ様です」
「ありがとうございました!」
彼女は礼儀正しく二度目の礼をして、その場から立ち去って行く。
彼は彼女の、そんな淡泊な処が少し寂しくも有り、また非常に頼もしくも有った。
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