雫「あっ!!えっと、わたし・・」
「用事、思い出しちゃった!」
澪「ええっ?!何よ?いきなり・・」
折角親友と共に喜びを分かち合おうと意気込んでいた澪は、肩透かしを食らって戸惑いを見せる。
典史「さて、と・・」
「僕も学校で練習をしなきゃならないな~」
澪「はあぁ?・・」
「コーチまで?」
雫と彼は、さり気無いアイコンタクトで互いの意志を確認して行動を起こして行く。
雫「ええっと・・じゃあね!」
「澪も頑張って!!」
澪「頑張ってって?・・」
典史「花村も良く頑張ったね!」
澪「頑張ったねって・・何を、よ?」
澪は目を白黒させながら二人を見送って居る。
澪「一体全体、何なのよ!!」
完全に蚊帳の外と成った澪を他所に、二人は無言でそれぞれの更衣室へと向かう。
そして二人共に水着の上へトレーニングウエアを纏っただけで、予め決められていたかの様にボイラー室へと消えて行く。
体育館のプール施設脇に在るボイラー室には、滅多に人の出入りは無かった。
それは近い過去の或る日、雫と典史の何気ない会話の中である。
雫「ここって・・人の出入りが無さそうね!」
典史「ああ!そうだね!」
「ここなら・・誰にも気付かれずに・・」
二人は、そこ迄言って互いの目を確認して納得する。
いざと云う時には使える、と。
そして今、雫と典史は心の導くままに、誰も居ないボイラー室で向かい合っている。
それぞれが特別に示し合わせた訳でも無いのに、である。
典史「相原・・・」
雫「桑島、コーチ・・」
二人の熱い心には、お互いの名を呼ぶだけで充分であった。
彼は彼女の顔に唇を寄せて行く。
典史「相原・・・」
「好きだよ!」
雫「わたし、も・・」
彼と彼女の人生初キスであった。
彼は彼女の身長に合わせて少し屈んで、柔らかな唇を確かめて行く。
「チュ! チュッ、クチュッ!」
単純に唇を逢わせるだけの行為ではあったが、二人にとってはそれで充分である。
彼は初めて味わう異性の甘い香りに精神を粉々に打ち砕かれる。
彼女は愛しい異性に身を任せる充実感を堪能する。
二人はやっと一つに成るきっかけを掴んだ事に心を安堵させて行く。
雫「・・ファーストキスって・・」
「もっとロマンチックなものだと思ってた・・」
二人の横には、ゴーゴーと唸りを上げるボイラーが回っている。
典史「僕も!!」
「そう思った!」
雫「ええっ?!!」
「貴方も初めて、なの?」
典史「すみません。お婿に行くまでは・・
取って置こうと思っていたもので・・」
雫「ぷっ!(笑) ククッ!」
彼の冗談で二人の緊張は一気に解けて行く。
雫「あの時の約束・・」
「憶えてる?」
典史「君の云う事を何でも聞くってヤツ?」
雫「・・・うん!・・・」
典史「僕も・・」
「本当は僕も君と・・
エッチしたかったんだよ!」
雫「本当に?」
「やっぱり!・・・
私の事、えっちな目で見てたんだ!」
典史「うん!・・だって、君以上にエッチな女の子なんて
この辺りには居ないからね!!」
雫「もうっ!!」
「しらないっ!!」
二人は身体を寄せあい、抱き締め合って行く。
もう誰も彼女らの行為を止める事は出来なかった。
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