お互いの気持ちをさらけ出して仕舞った二人は、もう以前の関係には戻れない。
クラブ内での些細な出来事ですら、互いに意識し反応して仕舞う。
そして、それは特に彼の方で、その傾向がより強く表れて行く。
彼は雫の一挙手一投足に自らの股間を熱くたぎらせて自分自身を困らせる。
雫「あっ!!・・」
典史「ごっ、ごめん!!」
二人同時に同じ物を手に取ろうとして、互いの顔を見合わせては赤面する。
こんな事の繰り返しに、澪は益々、そして更に疑念を抱く。
澪(怪しい・・実に怪し過ぎる!)
そんな澪の思いを他所に、二人は本来成すべきである作業を粛々とこなして行く。
心の一部分で繋がり合い、それを更に理解しようとする二人は定めた目標がより正確に見える様になった。
雫「スポーツサイエンス・・センター?」
典史「そう!」
「二人が今抱える問題を映像やグラフと数字で明確にする!」
「きっと今よりも無駄を省いて密度の濃い練習が出来る様になる・・
と僕は思うんだけどね!」
澪「それっ!!」
「いいですね!」
「是非、お願いします!」
三人は北川コーチの尽力も有って、国立のスポーツ施設に潜り込む事が出来た。
そして、そこで得たデータを基に、彼女らは更に突き詰めた練習を重ねて行く。
そして練習メニューを刷新してから二か月後の或る日。
雫と澪は、再度記録の更新を目指してプールサイドに立った。
典史「準備は・・イイ?」
雫「いつでも、ど~ぞ!」
雫は彼の合図と共にプールへと勢い良く飛び込んで行く。
典史「今の調子は?」
澪「勿論、万全です!」
典史「じゃあ、スタート台へ!」
澪「はい!分かりました」
澪もいつも通りに、そして更に冷静な様子でスタートを決めて行く。
二人は練習の成果を見事に記録として反映させて、共に自己ベストを更新した。
特に雫の場合は出色の出来で、遂に女子の100メートル日本記録に並び掛けるタイムを叩き出して仕舞う。
典史「53秒7・・です!」
雫「っはあっ!・・はあっ! はぁっ!!・・」
「・・53びょう7?・・」
「・・はあっ!・・ ほ、んとうに?・・」
典史「ああ!本当に!!」
雫「ケホッ! ケホッ!・・・マジ、で?」
彼女は思いも寄らぬ結果に咳き込みながら、彼に念を押して行く。
典史「マジです!!(笑)」
雫「・・・・・」
澪「雫ぅ~!!」
「やったじゃない!!」
「凄いよ~!!」
雫「・・・うん!・・」
手動による手元の時計ではあったが、関係各位を充分に納得させる事の出来る結果であった。
勿論、澪の方も素晴らしい成果を得られている。
典史「相原、良くやったね!!」
「素晴らしいフォームで・・」
「今までで一番・・良い泳ぎだったよ!」
雫「・・うん!・・」
澪「な~によぉ~? 怖い顔して!」
「もっと素直に喜べば?」
澪も感極まって、いつになく感情が高ぶっている。
雫「分かった・・」
雫は叫ぶでも無く、さりとて泣き出す訳でもない。
只々、淡々と事実を受け止めている様にも見える。
だが彼の方は違った。
雫から告白を受けてから数か月。
彼は次第に高まって行く彼女への思いを紛らわす為に、自らも大学での練習に打ち込んだ。
しかし寝ても覚めても彼女の顔が脳裏に浮かんで来る。
それを払拭する為に、彼は更に練習を重ねて行く。
そして練習を重ねれば重ねる程、オフの時間での性欲が高まって仕舞う。
そんな状態の彼は、睾丸に溜まり過ぎた精液を毎日の様に雫をオカズにして抜いていた。
更に最終的には夢の中で彼女を犯すまでに成って仕舞った。
併せて、彼女の方も単に感慨にふけって居る訳ではなかったのだ。
彼女の方も彼への思いを更に大きくして行った。
だが、彼にその思いをダイレクトに受け止めて貰えなかった彼女の心は、いずこへと彷徨っていたのだ。
その二人の心が、記録達成と云う一つの区切りを経て、大きく近付いて行く。
二人の互いを求める心の堰は激しく決壊して、体裁を整える事など最早どうでもよくなって仕舞った。
この後、雫と典史は何とかして、少しでも早くお互いの身体を求める事が出来ないかだけを考え始めていた。
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