彼の将来に向けて建設的な意見を交わす筈で在ったミーティングが一転した。
それは一人の男を巡って、怖すぎる女たちの恐ろしい迄の修羅場と化して仕舞ったのだ。
康子(この、小娘がぁ~!!)
(遠慮もせずに言いたい放題!!)
(一体全体、如何してくれようか?!!)
そして、特に康子にとっては譲れない一線に、ずかずかと足を踏み入れられる様な感覚が強く感じられた。
それは康子と正章が、その愛を確かめ合って生身の身体を繋ぎ合わせ、子作りに励み始めた矢先の出来事だったからである。
澪(なんなの?この二人?!!)
(絶対!!、ぜ~ったいに、怪しい!!)
練習に於ける彼の好収穫も、二人の愛による結果だと思わざるを得ない。
だがしかし、その事は二人による二人だけの決して漏らす事の出来ない秘密であった。
そんな状況で在れば第三者である澪に対して、かくかくしかじかと説明をする訳にも行かない。
かくして康子は八方塞がりとなり、思わず感情的な態度を取って仕舞った。
康子「花村さん?・・」
「・・ふふんっ!!(嘲笑)・・」
「貴女は所詮、私たちの”お手伝い“なのよ!!」
康子がまた、勝ち誇った態度で巻き返して来る。
そしてそんな態度を見せ付けられた澪は、珍しく感情的な態度で応酬した。
澪「貴女が出来ない事を私が代わりに
やってあげてただけなのに・・」
「お礼の一つも無いなんて・・」
「サイッテ~!!」
康子「はあぁ?!!」
「それがコーチに、あっ!否!」
「メダリストに向かって言う言葉?!!」
「礼儀の欠片も無いわ!!」
澪「な~にがオリンピックよっ!!」
「今じゃ、只のオバサンじゃない?!!」
康子「何ぃ?・・」
「依りによって、おばさ・・・」
「・・そこ迄言うなら勝負よ!!」
澪「喜んでっ!!」
「掛け値無しの真剣勝負でお願いしますっ!!」
かくして二人の熱い女性による、水泳と云う意地の張り合いを舞台とした幕は華々しく切って落とされた。
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