『あぁ、暁美さん』
ほむらは立ち止まる。
『君が暁美・・ほむらさんだよね?』
『はい、なんでしょうか』
『暁美ほむらさん、転校2日目だけれど何か困っている事は無いかい?』
『いえ、特にありません』
『相談したい事は?』
『ありません』
『鹿目まどかさんの事は?』
『いえ、何もありません』
『魔法・・少女』
『・・・』
『魔法少女って言葉は知っている?』
『いえ、知りません』
『それが何か?』
『いや、ちょっと気になる言葉で調べているんだよ』
『この辺りでは聞いた事の無い言葉だから転校生の暁美さんなら何か聞いた事が無いかなって
思って』
『あなたには何を言っても分からないわ』
『知らない事を知らないままで済ませる事も出来る』
『でも聞いた上で理解しようと努力する事だって出来る』
『話す前から理解されないと割り切ってしまうのもどうかと思うんだ』
『暁美さんも何か相談したい事があったら気軽に訪ねて来て欲しいな』
『そうですか』
暁美ほむらにしてみれば同じ身の上の魔法少女にでさえ話しても理解されなかった話しだ、
魔法少女の事、魔女の事。
時間遡行の事やワルプルギスの夜。
一介のスクールカウンセラーに相談して解決出来る事などでは無かった。
『あぁ鹿目さん、魔法少女の事とか少し調べがついてきてね』
『まとまってきたけれど今日の放課後にでも話しを聞くかい?』
最初に相談した日から2週間ほどが経過していた。
その間にも何度か相談室を訪れ、夢の話しや魔法少女の話し。
他愛の無い話しに恋愛の話しなども出来る関係がまどかと先生の間には築かれていた。
『まず魔女と魔法少女という区分については年齢での呼び分けでしかない様だ』
『そして女性が悪魔と交わると魔女になる』
『まじ・・わる・・ですか?』
『鹿目さんも保健体育で習っているはずだよ?あまり詳しく説明するとセクハラになってしま
うから僕からは言えないけれどね』
『あっ・・!』
交わるという言葉が性交を指すのだと気がついてまどかは頬を赤らめる。
『悪魔に女性とそういう事をする機能がある、という事には僕も驚きだけれどね』
と先生は赤くなったまどかに冗談っぽく言ってはみたものの少しばつが悪そうだった。
まどかも男女の性差についても習った事だし、性交と呼ぶ行為についても全く実感を伴わない
けれど自分自身が産まれて来た事もそうだし
弟のタツヤが母親のお腹に入る前には夫婦で仲良くしていた事があったな~と思い出して更に
赤くなる。
今でも仲が良いのは変わらないし、そういう声が聞こえて来る事もあったから。
『悪魔の力を持って厄災を呼ぶとして忌み嫌われる存在』
『えっ!?』
赤くなってボーっとしていた所に先生の声が飛び込んで来る。
『実際にそういう能力があったのかは分からないけれどね』
『でも史実において魔女狩りは実行されて幾百幾千とも知れない命が失われている』
『どうしてそんなリスクが高い事なのに魔女になろうって思うんだろう・・』
まどかは単純に疑問に思う。
『このケースは単純に疑心暗鬼や隣人を追い落とそうとする迫害の結果として起こった事』
『本当に魔女としての能力を持った人が実際にそういう被害に遭うまでじっとしているだろ
うか?』
『そ、そうですよね』
魔女の能力を持った人がなぜ災厄を呼んでしまうのだろうとも思う。
『魔女になってでも成し遂げたい想いっていうのがあったのかも知れないね』
『成し遂げたい想い・・』
『悪魔の力で何を得られるかというのも地位と名誉、財産だったり』
『他人を呪う為の魔力だったりね』
『あと分かりやすい所では空を飛ぶ、とかね』
『ほうき!ですね!』
『契約とか怖くないのかな・・?』
『どうなんだろうね?催淫って効果も悪魔は持っているって事だし』
『さい・・いん?』
先生はしまった!という顔をしながら小声で教えてくれた。
『気持ち良くするって効果だよ』
やっと抜けたと思った顔の赤みが今度は一気に耳まで赤くする。
ドキドキの限界を感じながらまどかは下腹部のもやもやとした感じにも気がついた。
『気持ち・・いいってどんななんだろう・・?』
今度はまどかがしまった!という顔になる。
頭がボーっとしてしまっていて思った事がそのまま言葉に出てしまったのだ。
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