JCと子作りしませんか? 第二章17
早速始まった様だ。
嫌な予感が的中した。
出会った時からコミュニケーションを取ろうとする意志は全く見られず、逆に冷静な眼でこちらを観察している様にも見える。
女性側から見れば、これだけ過酷な状況では心にバリアーを張らざるを得ない事は承知するが、それにしても表情に何の感情も感じられない。
彼は思った。
先ずは自分も何も考えずに対応をしてみようと。
「それじゃあ、先ずは温泉にでも浸かりに行きますか。 ねっ!桜井美香さん」
彼女は、はいと事務的に応えて後ろに付いてくる。
そして、待ち合わせる時刻を決めて大浴場の入り口で別れた。
前途多難ではあるが、先ずは温泉である。
お湯に浸かれば勝手に全身を癒してくれる。
東京での目まぐるしい生活を思えば、ここは極楽である。
地方ロケなどで、よく温泉地には訪れるが、やっぱりプライベートでの訪問は気分が良い。
「俺ももう、歳かな」
などと云う若い女子が使うような言葉も、自然と出て来る様になった。
彼は柔らかなお湯を堪能していた。
と、のんびりして居たらもう時間は過ぎている。
彼は急いで浴衣に着替えて外に出ると、彼女は既に入り口付近のソファーに腰掛けて待っていた。
「ごめん、ごめん。 待った?」
と彼が謝ると、彼女は
「いいえ、私も今、出て来たところです」
などと、至って事務的である。
二人は部屋に戻って食事が来るのを待った。
折角だからと彼はPCを開いて、簡単な仕事を始めた。
部屋の中では、カタカタとキーボードを叩く音だけが響いている。
「あっ、ごめん。 気付かなかった」
と言って、彼がテレビの電源を入れて、リモコンを彼女に、はいっと渡すと彼女は少しだけ眼を見開いて彼とリモコンを見た。
部屋の中では夜のニュースが流れている。
彼女は黙ってそれを見ていた。
暫くすると夕食が運ばれて来た。
彼は仕事を切り上げて、食卓の前に来た。
二人は黙って食事をしている。
彼がたまに
「これ、美味しいね~」
と言ってにっこりとするが、彼女はただ、はいっと言うだけである。
そして、食事が終わると彼はまた仕事を始めた。
彼女は黙ってテレビを見ている。
すると彼が突然
「う~ん! は~ぁ」
と言って背伸びをして言った。
「また、温泉に行くけど、君もどう?」
すると、彼女も
「はい、 ご一緒します」
と言って付いて来た。
今回は露天風呂である。
彼は自然の景色を楽しみながらお湯に浸かった。
気分が良い。
などと言っている間に、また時刻が来た。
着替えて外に出ると、また彼女が待っていた。
部屋に帰ってテレビを点けると、かなり前に放映された自分が出演している番組が映っている。
彼は仕事目線で無言のままテレビに見入っている。
彼女は相変わらず黙って、彼を観察していた。
彼はテレビを見終わると、また仕事を始めた。
そして日付けが変わる前に彼女に言った。
「悪いけど最近寝不足なんで、先に寝るね」
と言って、とっとと寝床に入ってしまった。
彼女も彼の態度を量り兼ねていた。
別に怒っている風でもない。
それどころか、優しい自然な笑顔で接してくれている。
彼女は困っていた。
そして、開けた二日目の状況も、昨日と全く変わりが無い。
彼は至って普通に過ごしている。
この状態に、彼女の方が痺れを切らした。
夕食の時にである。
「あの、 何を考えているんですか?」
と、彼女が聞いた。
すると彼が
「んっ? 今日の食事、気に入らない?」
美香「いや、そうじゃ無くてですね!」
「え~と、あの、 いや、兎に角ですね」
「んっ? なっ、何?」
美香「あの、藤田さん、私が最初に言った事、根に持ってますよね?」
「あ、いや、そんなことは・・・」
美香「では何故、私に触れようとしないんですか?」
「それは・・・君が可愛いからかな?」
美香「はぁ?」
彼女は感情のペースを乱されていた。
それは自分でも判断出来ている。
だが、自分自身でコントロールが効かなくなっていた。
美香「何故? どうして?」
彼女の問いに彼が答えた。
「だって、君みたいな素敵な娘を物みたいに扱う訳にはいかないでしょ?」
それを聞いた彼女は、更に冷静さを失った。
美香「扱ってください!」
「わたし、物ですから」
もう、売り言葉に買い言葉である。
「本当にいいの?」
と彼が聞くと
美香「当たり前です!」
などと、もうふてくされている状態だ。
「じゃあ、1時間後に」
と言って、彼は部屋を出て行った。
彼女の混乱はピークに達していた。
いつもは冷静な自分が我を失っている。
彼女にはそれが堪らなく悔しかった。
さて、そんな彼女を尻目に彼は温泉に浸かっている。
ちょっと、やり過ぎたかなと彼は反省していた。
お湯から上がって部屋に戻ると、彼女は布団の上で正座をしていた。
そして、おもむろに口を開いた。
「よろしくお願いいたします」
と言って、深々と頭を下げた。
いつもの冷静な彼女に戻っていた。
続きます
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