「何?」
俺が階段の上から返事をすると
「かあさんちょっと、買い物に行ってくるから二人で留守番よろしくね」
「なんだよ?何も客が来てるときに出掛けなくたって…」
言いかけた時、玄関の締まる音がした。
「お母さんお出かけ?」
「ああ、買い物だって。夕飯に、お前になんかうまい物でもご馳走しようってんじゃねぇかな」
「そんな…気をつかわなくていいのに…」
そう言うミズキちゃんは、少し嬉しそうだった。オフクロが自分をもてなそうとしていることが、嬉しかったのだろう。
だが俺は、まださっきの『エッチなこと』,を引きずっていた。しかも今からは、この家に彼女と二人切りだ。
俺はさっきまで自分が座っていた場所を通り越し、ミズキちゃんのすぐ横に正座した。
ミズキちゃんは、「ん?」という顔をしたが、後ずさったりはしない。
そのままゆっくりと両腕を伸ばし、彼女の細い肩を抱き寄せる。
「あ…」
わずかにためらいの声を出したが、そのまま俺の胸に身体を預けてきた。
ここまでいい雰囲気だったのだから、ここで告白をし、キスでもすれば良かったのかもしれない。けど俺の頭は、『ミズキちゃんが俺に抱かれる妄想をしている』という勝手な想像に支配されていて、もうそのことしか考えられなくなっていた。
抱き合ったまま彼女を押し倒し、小さなふくらみに顔を埋めた。
「あ… だめ…」
大きく口を開き、ふくらみ全体を口に収めるように愛撫すると、薄いTシャツとスポブラの生地越しに、プリンより柔らかい胸の感触が伝わってくる。
「やあっ… あっ…あっ……んんっ!」
いやと言いながらも、ミズキちゃんの声が次第に甘い響きになってくる。
『おっぱい…ミズキちゃんのおっぱい…ち、乳首はどこだ?』
夢中で舌を這わせるが、彼女の乳首が小さすぎるのか、見つけられなかった。
もどかしくなってTシャツを捲り上げようとすると、ミズキちゃんは慌てて裾を押さえた。
その手を荒々しく払いのけ、一気に捲ると、水色のシンプルなデザインのスポブラが現れた。
その裾に指を掛けて捲ろうとすると…
「やだあっ!ジュンさんやめて~」
ミズキちゃんが泣き声で訴えた。
その声に俺は、頭から冷や水を浴びせかけられたようになり、彼女から飛び退いた。
「ごめん!俺、なんてことを…」
ミズキちゃんはゆっくり起き上がり、身繕いをした。
「最低だ!これじゃあいつらと!同じじゃねぇか…」
「ち、ちがう!」
ミズキちゃんが驚くほど強く否定した。
「違わねぇよ。俺は今、お前を力づくで犯そうとした。結局俺ってやつは…」
「違うよ!あんなのと、全然!だってあたし、ジュンさんのこと好きだもん。知らない人にいきなり襲われるのなんかと…」
「えっ?」
ミズキちゃんは、『しまった!』という顔をした。
「ミズキちゃん、今何て?」
「……助けてもらったから…とかじゃないよ。ジュンさんほんとは、すごく優しいし、一緒にいて、楽しかった。だから…」
グズな俺は、とうとう年下の女の子の方から、告白させてしまった。
「…じゃあ、なんで嫌がるんだよ?何も泣くこと…」
「それは… あたしまだ中学生だし…そういうのは…」
「じゃあ高校生になれば、いいのかよ?」
俺が言うと、なんと彼女はコクンとうなづいた。
「ほんとに?高校生になったら、俺にくれるのか?」
彼女はもう一度、大きくうなづいた。
俺は彼女を強く抱き寄せ
「俺も…好きだった!あの事の前から…知ってた。だから、どんなことをしても助けなきゃって、あの時…」
「うれしい…」
俺たちは唇を重ねた。何度も何度も…
二人とも、初キスだった。
そのままずっと抱き合っていたが、やがて俺は崩れるようにカーペットに横たわり、ミズキちゃんはそれに寄り添う形で胸に顔を埋めてきた。
二人ともずっと無言で、日が暮れて、オフクロが帰ってくるまでそうしていた……
オフクロは帰ってくるなり、俺の部屋に上がってきて、ミズキちゃんを夕食に誘った。
ミズキちゃんは遠慮したが、オフクロがしつこく勧めるので根負けして、食事をしてから帰ることになった。
オフクロが支度をしているうちにオヤジも帰宅し、4人でテーブルを囲む形になり、俺は照れ臭くて仕方がなかった。
いつも寡黙なオヤジも、その日は上機嫌で、俺のガキの頃の失敗話とかをミズキちゃんに聞かせては、しきりに笑わせていた。
食事が終わると俺は彼女を自宅近くの公園まで送って行った。
そこでまた少し話し、別れ際にもう一度キスをして、彼女の背中を見送った。
こうして俺たちはようやく、恋人同士になれた。
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