事件は、6月中旬に起こった。
事件といっても、僕が一人で騒いで、さやたんに迷惑をかけただけだったのだが。
日曜日、いつものようにさやたんがアパートに来てくれたが、沈んだ様子だったので、何かあったのか聞いてみた。
すると、出掛けにお母さんと喧嘩して来たのだという。
喧嘩の原因は…
僕はその時まで知らなかったのだが、さやたんは1学期の中間テストの結果があまりよくなかった。にもかかわらず、その後も週末になると、勉強もせずにどこかへ出掛けて夕方まで帰ってこない。(僕のせいだ。)とうとう見かねたお母さんが、今日は出掛けずに家で勉強しろと言って怒ったので、口論の末黙って家を出てきたというのだ。
「ミーどうしよう?私もう、土日外出禁止になるかも。スマホも取り上げられて。そしたらもう、ミーと連絡も取れなくなっちゃう…」
「…そうだね。お母さんの言うこと、間違ってないと思うよ。期末テストがんばらなきゃね。」
「うん…そうだね。さみしいけど、期末が終わるまでここには来ない。ミー我慢できる?」
「わかった。僕も協力しなくちゃね。ラインも朝晩1回ずつにしよう。勉強で分からない所があったら、電話して。」
「ミーゴメンね。私が普段からちゃんとしてれば…」
僕は首を振って
「さやたんを毎週ここに誘って、勉強の時間を奪ったのは僕のせいだ。大人なのに。ふたりのこれからのためだもん、がんばろうね!」
約束通りなら、さやたんの期末テストが終わるまで3週間、会えないということだった。でもその時僕は、それを乗り越えられると思っていた。あさはかにも。
次の日曜日、名古屋に来てからさやたんに会わない最初の週末。
僕も、大学の前期試験の準備やレポートで忙しかったので、なんという事もなく過ぎた。
だがその翌日あたりから調子がおかしくなって来た。何をするにも気力が起こらず、気がつくとボーッとさやたんの事を考えている。
そして次の週末。あまりエアコンが効かない暑い部屋で、僕はがむしゃらに試験の準備をしていた。
今ごろさやたんだって、一生懸命がんばってるのに、僕がボーッとしててどうする?弱音を吐いている場合じゃない。がんばらなきゃ!僕ほひたすら自分を追い込んだ。
追い込みすぎて、そして…
ばかになった。
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