萌は人懐っこい、まるで小動物の様な女の子でした。
今となっては恥ずかしいんですが、当時の僕は悪ぶってヤンキーを気取っていました。
と言っても何か悪い事をする勇気など無い、エセヤンキーですけど。
親戚への挨拶を「どもっス」程度に済ませて、必要最低限以外は喋らなかった。
結果、その場に馴染める筈も無かった。
そんな僕に、何故か彼女は懐き、くっ付いて歩きました。
祖母へ線香をあげると、早々に外でタバコをふかし友達にメール。
当時はまだ二つ折りのガラケーだったので、今のスマホの様に出来る事は多くありません。
暇になった僕は、目を細めながら空を見ていました。
「あーっ!おにいちゃんタバコすってる!」
条件反射的に火を消すと、そこには萌がいました。
「あー…うん。ヒマだから」
等と何故か幼女に謎の言い訳を繕う自分。
「ヒマならあそんでっ!」
正直な所ロリコンな僕は、男女問わず純粋に子供が好きという面もあったので、一緒に遊びました。
昼御飯で呼ばれる頃にはすっかり仲良くなって、ヤンキーぶっていた自分の心も不思議と解されていたのでした。
それだけでは無く、萌を通じて親族と会話が弾み、自分で作っていた壁は完全にこの女の子に取り払われたのです。
(天使みたいな子だな)
昼食後。
大真面目にそんな事を考えていると、萌が僕の手を引いて二階で遊ぼうと言い出しました。
現在、本家には誰もいません。
大人たちは夕飯の買い出しに。
他の子供たちは公園に遊びに。
一番小さな萌だけ、残されたのか、残ったのか。
駄目だと解っていても、どうしても思考は回転し、最低な答えが導き出されます。
今、この家に。僕と萌、二人きり。
手を引かれながら、階段を登りながら。
高速で脳内会議が繰り広げられます。
「やべー!やべー!イタズラするチャンs「駄目に決まってんだろ!!」
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