この話しもそろそろ終わります……俺も幸せを感じていた。帰りに夕飯を食べた。暗くなった峠道を家に向かって走る。最初話しをしていたが話題も尽き、助手席で愛はいつの間にか眠っていた。真っ暗な峠、街灯も所々にあるだけ対向車もすれ違わない。腹も満たされ暖房も効いていた。峠なので油断していた訳ではなかった。右手にダムが見え左手は山。すれ違いがやっとの狭い道だった。突然山から黒い物体が目の前に現れた。俺は右にハンドル切った。車はガードレールを突き破って落ちた。バキバキっと木をなぎ倒しダムに落ちた。冷たい水が入って来る。俺はかろうじて動く左手で愛の右手を掴んだ。愛は俺を見て何か言ったがクラクションの音で聞こえなかった。(ああ…俺達死ぬのか…)と沈む車の中で思った。(愛と出会え幸せだったな…来世は結婚しような…)薄れ行く意識の中愛の最後の言葉を思い出す。愛はこう言っていた「ありがとう」と…やがて車は手繋いだ2人を乗せたまま、水面から暗く深い水底へと消えていった。…完…
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