明くる日は、おじさんに会えませんでした。
おじさんに会えないと寂しく思う自分がいました。
明日おじさんに会えるのに。
でも、ゆっくりお話しようなんてどんなお話なんだろう?
そんな事を一日中考えていました。
土曜日になり約束の時間が近付いてきました。
どんな服で行こう……。6月、季節は初夏。
私は、デニムのショートパンツに黒のニーハイ。
上は、白のTシャツ。その上に薄手のパーカーを着て出かけました。
全然女の子らしくないボーイッシュな服しか持ってなかったので。
公園までは歩いて7,8分。少し汗ばむような天気でした。公園に着いておじさんを探すも見当たりません。
まだ時間が早かったのかな?
暫く待っていると後ろから肩を軽く叩かれました。
「美咲ちゃんお待たせ!」
振り向くとそこには今までとは違ったおじさんがいました。白いワイシャツにジャケットを羽織り、下はジーンズ姿。髪型はオールバックでビシッと決めたおじさん。
私は目が点になり思わず吹き出し笑いをしてしまいました。
「ごめんなさい笑ってしまって。あまりにびっくりして。おじさん……その格好どうしたの?もしかして無理して用意してきたの?」
するとおじさんは優しく微笑み頭を掻きながら、
「美咲ちゃん失礼だな~。美咲ちゃんの為に服選んで来たのに似合ってないかな?ぼろぼろの服じゃゆっくりお話出来ないからね。美咲ちゃんの私服初めて見たけどボーイッシュで可愛いね。部活で日焼けした肌に似合ってる。」
可愛いねと言われ照れ笑いを浮かべながら、
「ありがとう。私スカート持ってないんだ。制服だからスカート履くだけなの。おじさん……服似合ってる。格好いいかも。」
そのまま公園のベンチに2人座りお話を始めました。
「美咲ちゃんの性格がそのまま表れてる私服だね。
負けず嫌いで正義感が強くて。小さい時、両親を無くしてから何でも自分1人で問題を解決してきた。いじめの時も自分だけで解決しようと思ってたよね?違うかな?」
私は横に座るおじさんを見上げ、
「………どうしてわかるの?小さい時から何でも自分で解決してきた。叔母さんに相談するのは心配かけるから嫌だったし。でもいじめは自分だけで解決するのは無理だったかも。おじさん……おじさんがいじめを無くしてくれたの?どうしても知りたい。」
するとおじさんは暫く黙っていました。
ゆっくり口を開くと、
「おじさん美咲ちゃんより人生経験豊富だからね。
本当の事話すよ。実はね…今日は美咲ちゃんの為に無理して服用意してきたなんてね。」
本当の事が知りたい私は頬っぺたを膨らませ、
「おじさん……本当の事じゃないもん。私怒っちゃうから。」
「ごめんごめん。今度は本当に話すよ。実はね……おじさんはまだ独身で42歳。あっ美咲ちゃんにとって42歳はおじさんか……。おじさん22歳で起業してね、ある会社の社長をしているんだ。ホームレスじゃありませんでした。」
私はあまり驚きませんでした。
「やっぱり…おじさんホームレスじゃないって最初に会った時から思ってた。私の勘は合ってた。それにスマホ持ってたし。」
逆に私が驚かない事におじさんはびっくりしてたみたい。
「流石、美咲ちゃん。たまに会社の事を任せて身を隠してホームレスみたいな事をしている。世間のなんたるかを知るためにね。おじさんお金があるからいろんな人が近付いてくるんだ。怪しい人や特にお金目当ての女の人がね。」
私はおじさんのお話を真剣に聞いていました。
「公園にいない時は仕事してる時。美咲ちゃんのいじめの事は知り合いの弁護士に頼んだんだ。すぐ動いてくれたから助かったよ。」
私は不思議そうな顔で、
「ありがとう……でもどうして私に親切にしてくれたの?……両親がいなくてかわいそうだったから?」
おじさんは私を見つめ、
「かわいそうだからって誰にでも安易に親切にしたりはしないよ。美咲ちゃんに一目惚れって言ったら信用してくれるかい?好きになったからじゃ理由にならないかな?」
私は思ってもない言葉に動揺し顔を真っ赤にしてしまいました。でもまだ幼い私に一目惚れなんて。
「……………本当?」
「クスッ…美咲ちゃん動揺してるね。年がいもなく美咲ちゃんに一目惚れして声をかけたんだ。ホームレスの格好をした僕に笑顔で挨拶してくれたよね?美咲ちゃんは人を見た目で判断しない人だって思って軽く会話をかわすうちにますます好きになってね。おじさんの事迷惑かな?」
私は感情の高まりを感じて涙が浮かんできました。
幼い頃両親を亡くし叔母さんにお世話になってきたけど、自分の気持ちを素直に話す相手はいませんでした。でもおじさんなら……何でも話せる。
恥ずかしそうに小さな声で
「嬉しい……。私もおじさんの事……好き」
「ん?美咲ちゃん聞こえない?」
勇気を出して言ったのに…意地悪なおじさん。
大きな声で
「もうっ!聞こえなかったの?私もおじさんの事好き!大好きなの。会えない日は一日中不安だったの。聞こえたでしょ?」
するとおじさんは私の口を塞ぐようにいきなり口付けをしてきました。びっくりして目を開いたまま固まってしまいました。
ほんの0.何秒かの短いキス。おじさんの唇が離れても固まったまま。胸はドキドキ……。
「ごめん……あまりにも可愛いから思わずキスしてしまった。美咲ちゃんも好きだって言ってくれて気持ちが高まってしまったよ。」
私はキリッとした目でおじさんを見つめ、
「私の初めての…キス。ファーストキスを奪ったおじさん許さない!」
そのままおじさんに抱き付き自分からおじさんの唇にキスをしました。びっくりするおじさん。
慌てて私を引き離し、
「もう美咲ちゃん…びっくりするじゃないか?でも嬉しいよ。いつまでもおじさん呼ばわりじゃ嫌だな。名前で呼んでくれるかな?」
積極的に自分からおじさんにキスをしたけど、本当はドキドキで胸が張り裂けるかと思った。でもまだ自分の弱い所を見せる事に抵抗があり…すべてを見せるにはもう少し時間がかかりました。
「信治さん…好き」
「んっ?声が小さくて聞こえないよ」
「もう意地悪!信治さん……好き!!」
「美咲………好きだよ。」
続く
まだエッチじゃなくてごめんなさい
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