久しぶりに見る、エリスたちの笑顔、育ち始めたばかりの胸、丸みを帯び始めたお尻。
通勤していた頃より、少し暑くなっていたので、近くに立っている子の襟元から、汗と少女独特の香りが入り混じって立ち昇り、クラクラした。
だが、僕は通勤するあてのない、ニセサラリーマンだ。この怪しい行動を誰かに見咎められないか、ハラハラしていたが、当然ながら車内の誰も、僕がニセであることを知らない。
僕はホッとして、『家にいたってすることもないんだから、明日からも毎朝この電車に乗りに来ようかな』と考えた。
こうして、僕のニセ通勤の日々が始まった。
ニセ通勤に慣れて来ると、僕は再び、電車の揺れに合わせて彼女らのお尻、二の腕、小ぶりのおっぱい、背中などとの『偶然の』ふれあいを楽しむようになった。だが、こちらからは積極的に手を出すことはしない。怖いから。
しかしある時ふと、気づいた。
『何が怖いんだ?』
置換願望がある男が、それでも『偶然のふれあい』以上の行為に踏み出さないのは、検挙されて色々なものを失うことが怖いからだろう。
家族、恋人、仕事…
だが、考えてみれば僕は、そのどれも持っていない。逮捕され、勾留されたとしても、それを聞いて怒り、悲しむであろう父はもういないし、父の会社の社長は辞めることになるかも知れないが、そもそも名前だけだし、出社もしていない。
『そうか。僕は自由なんだ。』
それなら、触るのをガマンしなくてはいけない理由なんか何もない。
だが、痴漢活動を始めてすぐに露見し、この電車に乗れなくなってしまったら、あまりに芸がない。その時の欲情に任せて手当たり次第に触りまくったら、そうなってしまうだろう。
そこで僕は決心した。
『やるからには、痴漢のプロになろう!そのくらいにならなかったら、この極上のお嬢様達に失礼だ!』
痴漢のプロ、痴漢師とはなにか?
まずは、捕まらないこと。そのためにはターゲットをよく見極めなければならない。
いくら好みのタイプでも、すぐに被害にあっていることを周りに知らせようとする子はダメだ。おとなしくじっと堪える子、気づいていないフリをしてくれる子がいい。
次に、テクニック。胸、お尻、アソコ。どこを触るにしても、自分だけ興奮して少女に痛い思いをさせているのでは、嫌われ、憎まれるだけだ。逆に、微妙なタッチで性感帯を刺激して気持ちよくならせてやれば、抵抗したり周りに助けを求めたりする気も萎えてくるというものだ。
幸い僕が見つけたこのハコは、毎日ほぼ同じメンバーのエリスガールが乗り合わせている。
そこで僕は、このハコに乗ってくる少女全員のファイルを作ることにした。
まず、スマホの音の出ないカメラアプリで顔や胸元、お尻を撮影。次に彼女ら全員が持っている通学カバン。その右下に小さくローマ字で
SAYAKA.K とかAYUMI.S などと名前が刺繍してある。普通は略すのはファーストネームの方だと思うのだが、エリスではファミリーネームを略すらしい。大人の男性でもファーストネームで呼び合う、欧米式を意識しているのか、名字を刺繍するのは個人情報漏洩で危険だと思っているのか。
いずれにしても僕にとってはありがたい話だ。これをスマホで捕り、自宅のパソコンに作ったファイルに名前を付けてゆく。日本語でどう表記するのかは分からないが、イメージを膨らませるため勝手に、槌紗弥香槌とか、〔あゆみ槌とか、想像して付けておく。
そして、ハコの中で本人を見つけた時は、心の中で『あ、紗弥香ちゃんだ』とか、『あゆみちゃんはどこかな?』とかつぶやいてみる。
そうすることで、一方的だが彼女ら一人ひとりに親近感が湧き、また不思議なことに、彼女らに痴漢を働くことの罪悪感も、薄らいで行った。
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