1日に3回も中出ししたのにもかかわらず、美咲ちゃんは妊娠しなかったので、僕たちの交際は彼女の高校卒業まで続いた。
その間何度も、彼女の父親に屋敷に呼ばれ、一緒に食事したり、酒の相手をしたりしたので、僕はだんだん婚約者風に扱われるようになって行った。
そして美咲ちゃんが高校3年の秋。そろそろ進路を決めなければ、という時期に、彼女の父親が再び海外へ赴任することになった。
なんでも前回立ち上げたのとは別の海外支店の開設が決まり、社長である彼が再び陣頭指揮を取ることになったのだそうだ。
これを聞いて、実質的な婚約者の僕は、さすがに黙っていられなかった。
父親がいなくなれば、美咲ちゃんはまた、あの広い屋敷にひとりで暮らすことになる。しかも今回は、彼女が中学生の頃に姉のように慕っていたあのメイドもいない。父親が帰国してしばらくして、美咲ちゃんがひとりじゃなくなったことに安心したかのように、寿退社してしまったのだ。
代わりに家事をやっていたのは中年の家政婦で、ただ義務的に仕事をこなすだけで、美咲ちゃんとのコミュニケーションは取れていないようだった。
僕は美咲ちゃんの父親に時間を作ってもらい、今後のことを相談しに行った。
「お父様が海外へ行かれたあと、美咲さんに、僕の家に来てもらう訳には行かないでしょうか」
僕が言ったのはこれだけ。同棲を認めてくれるよう申し出たつもりだった。
だが父親は、いつになく神妙な顔になり、
「そうだな。少し考えさせてくれないか」
と言った。
そして次に屋敷に呼ばれた時は、叔父と二人で来るように言われ、行ってみると、父親の他に、彼と旧知の仲だという結婚式場の支配人と、ウエディングプランナーが待ち構えていた。
支配人が叔父に挨拶して名刺を切ると、叔父は
「なんだそういう話だったのか、こりゃあめでたい!」
といきなり上機嫌になったので、僕は何も言えなくなってしまった。
父親と叔父と支配人で、どんどん話が具体的に決められてゆく間、僕はずっと美咲ちゃんの様子が気になって仕方なかった。
彼女も同席していたが、恥ずかしそうにうつむいて、大人たちの話を聞いているだけ。この展開をどう思っているのか。
ひと通り話が済み、美咲ちゃんが門の外まで見送ってくれた時、やっと二人きりになれた。
「なんだか、えらいことになっちゃったね」
「え?何か?」
「何がって、美咲ちゃんはいいの?これで」
すると彼女は少し考えてから
「…あなたは、嫌なの?あの、私と…」
「嫌なもんか!でも、いくらなんでも高校卒業してすぐに、なんて…早すぎない?」
「あ、でも、そういう子も結構いるし…」
「そうなの!?」
美咲ちゃんの話によると、同じ高校の3年生で、もう正式な婚約者がいて、女の子の卒業を待って挙式、という子が何人もいるらしい。
そこまででなくても相手が決まっている子は、進学も就職もせず、家で嫁入りの準備に入るらしい。
周りがそういう境遇なら、僕が美咲ちゃんにちゃんとプロポーズをせず、直に父親に結婚を申し出たとしても、それほど不自然には感じなかったのだろう。
僕が黙って考え込んでいると、聡明で優しいな彼女は僕の決心がついていないことを悟ったらしく
「…お父さんに言って、やめてもらおうか?式…」
と言ったので、僕は慌てて
「いや、それは… でも、いちどふたりでじっくり話し合わないとね」
そう言って、翌日仕事が終わった後に会う約束をして、その日は別れた。
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