翌朝、僕はまた、美咲ちゃんが乗る駅に向かった。
昨日あれだけのことをしたのだから、さすがに彼女は来ないだろう。電車の時間をずらすか、親に車で送ってもらうか。休むかも知れない。
そう思ってはいても、僕はどうしても、そうせずにはいられなかった。
駅に出掛けて行けば、逮捕されるリスクだってある。昨日したことが露見し、親が警察にしたとすれば、駅で刑事が待ちかまえているだろう。
僕は一応警戒して、それらしいのかいないか見回しながら、いつものホームに降り立った。
いつも僕より先に来て並んでいる美咲ちゃんだが、今日は姿が見えない。
『やっぱりな…』
僕がため息をついた時、なんと彼女が階段を降りて、僕の方に向かってきた。
そして、さも当然というように、僕のすぐ後に並んだ。
『どういうことだ?なぜ逃げないんだ?』
僕が混乱しているうちに、電車が来た。
ドアが開くと、美咲ちゃんは僕の横をすり抜けると、自分から昨日と同じ、トイレのドアの前に立った。
彼女の真意を確かめるには、とりあえず昨日と同じ行動をなぞってみるしかない。
僕は彼女の後に立ち、また壁ドンをして後から乗ってくる乗客の波から守ってあげた。
そして、車内が落ち着いた頃合いに、スカートの中に手を入れて、ショーツを膝まで下ろし、耳元で
「また、脱げちゃったね」
と囁いた。すると彼女は
「もう、おトイレはイヤ…」
と囁き返した。
それはそうだろう。僕は思った。彼女が僕から逃げない理由は、その時は分からなかったが、毎日エリス女学院に行って勉強しなければならないのに、毎朝電車のトイレでセックスをされたのでは堪らない。勉強どころではなくなってしまうだろう。
『おトイレはイヤ』=『セックスはイヤ』の意味だろうと思ってはいたが、それでも僕は、半分からかうようなニュアンスで聞いてみた
「おトイレがイヤなら、どこならいいの?」
すると彼女は、恥ずかしそうに、少しためらいがちに
「あ、あなたのお部屋で…」
僕はこの返事に、文字通り耳を疑った。聞き間違い…じゃないとすれば、この子は、『あなたとセックスをしてもいいから、あなたの部屋に連れてって』と言っていることになる。
聞いてから一瞬僕は、あまりの展開に、『これは何かのワナか?』と疑った。
だが、どう考えても美咲ちゃんが僕をワナにはめても、なんの意味もない。昨日のことを恨んでいて復讐したいなら、親に伝えて警察を呼んでもらえば十分だし、僕の弱みを握って脅すのだとしても、ハイソな彼女が僕から脅し取りたいものがあるとも思えない。
何より、美咲ちゃんがそんなダークな発想をするとは思いたくない。
美咲ちゃんは、素直で優しい子。そう信じたからこそ、僕は100人ものエリスガールズの中から、彼女ひとりを選んだのだ。
「僕の部屋に来てくれるの?」
僕が聞くと、彼女は小さく、でもハッキリと、頷いた。
僕は下ろしたショーツを引き上げてやり、彼女と手をつないで隣の車両に移動して、次の駅で降りた。
階段を上がり、逆向きのホームへ降りる階段の前を僕が通り過ぎようとすると、美咲ちゃんは
「あの、こっちじゃ?」
と聞いてきた。でも僕が
「もう電車はいいよ。君に会うために乗ってたんだから」
と答えると、ポッと頬を紅くして、黙って着いてきてくれた。
改札を出て、駅前からタクシーに乗って、僕の自宅マンションへ向った。
僕がマンションのエントランスでオートロックを解除しようとすると、ふいに美咲ちゃんが
「お金持ちなの?」
と聞いてきた。
「君の家ほどじゃないさ。でも、裕福な男が電車で痴漢なんかしてちゃ、おかしいかい?」
すると彼女は大きく首を横に振った。
おそらく彼女は、造2階建とかの安アパートを想像していたのだろう。
セレブな彼女が、そんなみすぼらしい部屋の万年床の上とかで、僕に抱かれてもいいと思ってくれていたことに、僕は率直に感動した。
でも、部屋に彼女を招き入れソファーに座らせ、飲み物を出してあげても、まだ美咲ちゃんが何を考えているのか分からなかった。
僕が何と切り出したものか迷っていると、彼女の方から
「あの、シャワーお借りしてもいいですか?」
と聞いてきた。
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