今にして思えば、ゆうがそれを取り出している所を見てしまったとしても、無言で仰向けに戻り、目を瞑って見せれば、それで「いいよ」の意味になったのだが、その時はそんな大人の対応はできなかった。
気づいた以上は、何か言わなければならないと思ってしまったのだ。
私はストレートに
「それ、挿れるの?」
と聞いた。
するとゆうは
「ああ。セックスだからな」
と、さも当然な事のような言い方をしたが、彼がそれを当然なことと考えていないのは、声色や態度から分かった。そもそも彼は、ふだんこんな言い回しをしない。
やはり、いざという時に私が抵抗するのを怖れているのだ。
最初私は、「いいよ。もう暴れたりしないからさ」
と言ってやろうかと思った。だがこれでは、弱い女が男の腕力の前で抵抗を諦めたようになってしまう。それだけはイヤだった。
受け入れるにしても、私が、自分の都合で、それを選び取るのでなくてはいけない。
そこで私は思いつくままに
「しょうがないか。私ももう、すっかり気持ちよくなっちゃったし。」
と言ってやった。
ところがゆうは、私の言葉を聞いて、またも絶句した。
この絶句の意味は、長い間私の中で疑問だった。
確かに私はこの日、レイプされるのを嫌がって、角材を振り回したし、彼の顎を殴った。だがその後は、素直に胸とアソコへの愛撫を受け入れ、あと少しでイカされるところだったのだ。そんな状況で「いいよ」と言ったからといって、そこまで驚くだろうか?
最近になってゆうの『寺』という投稿を読んで、ようやく理由が分かった。私はまたもや、無意識にハトコのひろ子さんと同じ言い回しをしていたのだ。
私の言葉を聞いてゆうは、私が、彼の最初の相手がひろ子さんだったと知った上で、そのことをからかうために、わざと同じ言い方をしたのでは?と疑ったのだ。
私は彼の投稿を読んで、ゆうの初めての相手がひろ子さんだったことに嫉妬した。でも同時に、ゆうがこの時私に、ひろ子さんとのことを知られたくないと思っていたことに、ちょっとニンマリした。投稿の中で彼は否定しているが、やっぱり彼はこの時、私に対して多少は、恋愛感情を持っていたのだと思う。全く好きでも何でもない女子に、他に誰とヤッたかを知られたって、気にする必要はないではないか。
ゆうが絶句している間も、私は仰向けになったまま、その時を待っていた。
彼はしばらく様子を伺っていたが、やがて私の脚を大きく広げさせ、腰を近付けてきた。
初恋のひとと、ひとつになる。
大好きなゆうちゃんに、私の処女をあげる。
そんな感傷とは別に、ふいに現実的な不安がよぎった。
『もしかしてこれ、すごく痛いんじゃ?』
私は不安のあまり、ついこんなことを口走った。
「挿れたら痛い?」
「知らねぇよ。俺は挿れられたことはねぇ。」
「い、痛くしたら殴る!」
舞は拳を握って見せた。
「我慢しろ。多分最初だけだから…」
言いながら、舞の両足の膝裏を抱え、ワレメの下端めがけてゆっくり押し込んだ。
「いっ?痛っ!」
まだやっと亀頭が、膣口の輪を通過しただけなのに、舞の顔が苦痛で歪み、次の瞬間怒りの表情に変わり、拳を握って肘を後ろに引いた。
ゆうの投稿にある、このやり取り。これは、私の記憶とは少し違う。
痛くしたら殴る!と言ったのは事実。でも、ほんとに殴る気なんてなかった。不安と恥ずかしさを紛らすために言ったのだ。
だから、怒りの表情で肘を後ろに引いた というのは違う。そんなことはしていない。
これは多分、ゆうが話を面白くするために大袈裟に書いたんだと思う。
本当は、私は痛さのあまり、上半身を起こして彼の胸板を押しのけようとしたのだ。
でも、ゆうが両手首を捕まえて、自分の背中に回させたので、あとは力いっぱいしがみついた。
ロストバージンというのは、思えば不思議な体験だ。ほとんどの女が、かなり痛い思いをするのに、そしてその痛みを与える張本人は、目の前の男なのに、どんなに痛くても、救いを求める相手はその男しかいないのだ。
だから女は夢中でしがみつく。だが強くしがみつくほど、男の身体の密着が進み、益々痛い思いをすることになるのだ。
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