私の生まれた村は、なんの特産品もない農村だったけど、なぜか美人が生れることが多く、べっぴんの里などと呼ばれていた。
私はこの村が大嫌いだった。
なぜなら、村の男たちは、村の美しい娘たちを大事に扱うどころか、近隣の町村に輸出してお金を得る商品のようにみなしていたからだ。
どの家の娘も年頃になると、勝手に近隣の金持ちとの縁談を決められ、家出や駆け落ちでもしないかぎりそこへ嫁ぐのが当然とみなされていた。
私は物心ついた頃から、そんな目にあうのはまっぴら御免、自分だけは絶対好きな相手を見つけて、その人と駆け落ちしてでも村から出てゆこうと心に決めていた。
ところが、美人ぞろいの村の女性に比べ、男どもはダサイブサイクはかり。外部から人が転入してくることもほとんどない。
小学校入学前に早くも絶望しかけた頃、村に一つしかない寺の跡取りとして、東京から私と同い年の男の子が来ることになった。
私の心はざわついた。「東京から来る男の子」それだけで、村のどの男より魅力的に思えたのだ。私は、小学校に入学してその子に会うのを心待ちにするようになった。
入学式の日、初めてゆうちゃんを見た印象は… 正直、とびきりの美少年、という訳ではなかった。でも色白で鼻筋が通った顔立ちは、村の他の男児よりはずっときれいに見えたし、何より心細そうにオドオドしているしぐさが、私の母性本能を思い切りくすぐった。ほとんど、ひとめぼれだった。
私は精一杯の笑顔で彼に接し、思いつく限り、彼の面倒を見てあげた。ゆうちゃんの方も私を気に入ってくれて、ほどなくふたりは仲良しになった。そんな日々が、ふたりが大人になるまで続くものと、信じていた。
ところが、3年生になった頃、私は衝撃の事実に気づいてしまったのだった。
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