ところが、翌日教室でゆうちゃんと顔を合わせた途端、自分でもビックリするくらい恥ずかしさが込み上げてきて、笑顔どころではなくなった。
ゆうちゃんに赤面してるのを悟られるのも気恥ずかしかったので、なるべく顔を彼の方に向けないようにして、普段通りの会話をするのが精一杯だった。
やはり私には、おかしくもないのにヘラヘラ笑ったり、媚びるように微笑みかけたりするのは、性格的に無理だった。
その代わり、何かゆうちゃんが何か聞いてきたり頼んできたりしたとき、いままでより柔らかい口調で、丁寧に答えてあげるよう心がけた。
彼はよく忘れ物をしてくるので、そんな時はこっちから声をかけて、必要なものを貸してあげた。
それからもうひとつ、『ゆう』と呼び捨てにするのをやめて、どんな時でも『ゆうちゃん』と呼ぶようにした。この私の小さな態度の変化を、彼は気づきてくれていただろうか?
少なくとも、私があの日のことを、怒ったり後悔したりしていないことは、伝わっていたと思う。
そんな風に、何事もなかったかのような平穏な日々がしばらく続いた。
すると今度は、別のことが心配になってきた。
男子中学生のゆうちゃんが、私と、少なくともあとひとり、村の女子とセックスをしたのだから、これっきりもうしたくならないとはとても思えない。でもその相手は私だろうか?
なにしろこの村は『べっぴんの里』なので、ライバルは多い。
村の男子全員から、姉のように慕われているひろ子さん。この頃急に女の子らしくなってきた、紗弥ちやん。(噂になった、ゆうちゃんの始めての相手は、多分このふたりのどちらかだと想像していた)
ゆうちゃんがブスと言っている、中3の夕子さんと、小6の美樹ちゃんも、ふたりともよく見れば目鼻立ちはかなりキレイだ。夕子さんは痩せれば、美樹ちゃんはもう少し肉付きが良くなり、メガネを外せばかなりの美少女になる。そのことに、ゆうちゃんがいつ気が付かないとも限らない。
でも、あの日から2週間もすると、時々ゆうちゃんの熱い視線を感じるようになった。見ているのは私の横顔だったり、胸だったり、お尻のあたりだったりした。
『やっぱりゆうちゃんも、私と2回目をしたいと思ってるのかな…』
だとしたら彼は、住職が一日寺を開ける日を、待っているのだろう。彼があの蔵を自由にできるのは、その時だけだから。
そこで私は、毎日帰り際に、ゆうちゃんの予定を確認する事にした。
彼は、住職がいる日はほとんど毎日、お寺の掃除や法事の手伝いをさせられている。そのため教室の掃除は私がひとりでやることが多かった。
これまではゆうちゃんが、「今日は法事があるから帰るぞ」などと声をかけてきたり、黙って帰ってしまったりだったのだが、6時間目が終わった所で私から
「今日はお寺の用事は?」と聞くようにした。
ゆうちゃんが、法事があるとか寺の掃除だとか答えたなら、その日は住職がいるということ。
「今日は住職が夕方までいないから、掃除できるぞ」と答える日もあった。
でも、夕方帰ってくるのでは、落ち着いて蔵の中で女子とヤる訳には行かないだろう。
ゆうちゃんとの初体験から、1ヶ月ほど経ったある日、私がいつもの質問をすると彼は、ちょっと目をそらして
「今日は住職は病院で、夜まで帰ってこないんだ。でも俺、ちょっと用事があって…先に帰ってもいいか?」
と答えた。私はそれを聞いて、急にドキドキしてきた。
『そうか。今日なんだ…』
私がいいよ、と答えると、ゆうちゃんは、
「そうか、わりいな」
と、私の目を見ずに言うと、学校を出た。
私が掃除を終えて、家への道を歩いていると、ゆうちゃんが、お寺の山門の陰に立っていた。
『やっぱり…』と思ったものの、彼が歩いてくる私をいちど見たあと、すぐに視線を落としまったので
「もしかして、誰か他の子を待ってるんじゃ?」という考えが頭に浮かび、私はキッとした表情になってしまった。
冷静に考えれば、紗弥ちゃんたち小学生を待っているのなら、もう遅すぎるし、ひろ子さんのバスが来るのはまだ1時間もあとなのだから、どう考えれても私しかいなかったのだが。
「誰を待ってるのよ?」
「別に…」
「また誰かとヤるんでしょ?美樹ちゃん?夕子さん?」
「あんなブス、相手にしねぇよ」
「じゃあ誰よ?」
ゆうちゃんの投稿にある、このやり取り。
ここまで問い詰めても、彼は「お前をまってたんだよ」と言ってくれなかったので、仕方なく、すごく恥ずかしかったけど、私はこの日のために父の寝室から盗んで来ておいた、小箱を差し出した。
「これ、使ってあげて。今日がたまたま危険日だなんて、滅多にないことだけど、それでも女の子にとって、中で出されるのは怖いよ…」
飽くまで、彼が他の子とヤろうとしている体でそう言ったが、実際は「今日はちゃんと、コレ使ってしてね。」と言ってるのと同じ。顔から火が出る思いだった。
ここまでしたら、やっとゆうちゃんにも私の気持ちが分かったらしく、小箱の代わりに私の手首をつかんで、蔵の中に連れて行ってくれた。
『ここでこれから、ゆうちゃんと2回目をすることになる。それはいい。好きなんだから。でも、その前にハッキリしてもらわなきゃ』
そう思った私は、
「あたしを待ってたの?」と聞いてみた。
「ああ」
「なんで?他の子でもいいじゃない」
こう聞けば彼は、たとえウソでも、私のことが好きだからとか、可愛いからだとか、言ってくれると思っていた。
ところがなんと彼は
「俺たちは、セックスの相性がいいみたいだからな」
と言ったのだ。
「なによそれ?」
私はあきれて、次の言葉が出てこなかった。
でも、考えてみれば、ゆうちゃんはお寺の戒律によって、セックスはおろか、女の子に恋愛感情を持つことすら禁止されているのだ。
どんな事情で彼が、その戒律を破ることにしたか、その時は知らなかったが、つまり恋愛に関しては、この村に連れてこられた5歳の時のままなのだろう。
誰かを好きになったり、彼女がほしくなったりするのも、すべてこれから。
それならば、一番近くにいるこの私に、恋をし、彼女にしてもらわなければならない。
そのためには…
私はこの1ヶ月の間、準備し、練習してきたことを試してみることにした。
※元投稿はこちら >>