『手当たり次第』という言葉がある。
その時期のカナエが、まさにそれだ。
だが、それは入念な計算に裏打ちされていた。
表面上は手当たり次第でも、カナエにしてみれば事前のシミュレーションの結果が想定以上の結果をもたらしているに過ぎない。
「興味無いわけじゃないよね?」
カナエの選定は確実であった。
カナエが無造作に選定した少女に対して、カナエの示した決まり文句を並べるだけで、面白いように同じ反応を示す。
「・・え、それって・・大丈夫なんだよね?」
『大丈夫』の意味は曖昧であったが、結果として少女達にと大丈夫であった試しは無かった。
少なからぬ少女達が堕ちていったが、カナエにとって些末な事象に過ぎない。
転校を余儀なくされた女子が一名、不登校予備軍が三名、結果として姿を消した教師も一名に及んだ。
しかも僅か二ヶ月、十月が未だ終わってはいないうちに、である。
「・・ね、本当に・・続ける・・の?」
弱々しいノゾミの問いの意味が分からない、そんな風情でカナエは応えた。
「『本当に』の意味が分かんない・・。」
ノゾミは恐怖した。
トボけるでもなく誤魔化すでもない、真に困惑したカナエの表情の天然ぶりに、だ。
この子は、化け物・・なのかもしれない・・。
そして、その化け物を世に放つキッカケを作ったのは、ノゾミ自身だったのかもしれなかった。
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