夏休み明け。
十三歳の中学生にとって、この時期の一ヶ月は精神的にも肉体的にも大きな変化を遂げる時期である。
個人差はあれど、どの生徒も着実な成長を遂げる中、誰もが驚くような変貌を遂げた生徒がいた。
カナエである。
口数こそ少ないものの、もともと成績も良く教師からの受けも良い少女は、姿形こそ変わらぬものの夏休み前とは別人のようであった。
素行や服装、髪型はそのままに独特のオーラをまとったかのようなカナエ。
そして誰もが感じていたこと、それは明らかに何かが違うが、何が違うのかが分からないことである。
夏休みが終わり数日が過ぎた頃、妙な噂が生徒達の間に広まりつつあった。
学校で性行為に耽る生徒がいるらしい。
男子生徒と女子生徒だという噂もあれば、教師と女子生徒だという噂もあった。
中には女子生徒同士だと噂すらあった程だ。
その全ての噂は正しい。
そして噂の核心を握っていたのはノゾミ、そして何よりもカナエである。
夏休み前と変わらず、ノゾミに隷属するカナエといった図式に変化は無い。
だが、それはプレイ上の役割であり、実質的な主導権は既にカナエの手中にあった。
あの男子、また呼び出せるかな・・?
例の男子生徒とノゾミを置いて先に帰宅したカナエは、その夜のうちにSNSを通じて問い掛けていた。
・・何をする気なの?
よもやのカナエからの問い掛けにノゾミは心底、驚いていた。
控え目に言っても、カナエは被害者である。
ノゾミにしても、やり過ぎであった感は否めない。
やや時間を置いて返って来たレスは、ノゾミにとって理解不能であった。
何って・・他にする事、無いじゃない?
『ビビる』という表現がある。
ノゾミはビビっていた。
カナエに、である。
騙し討ちに近いカナエのロストバージンをプロデュースしたのは確かにノゾミだが、後悔の念が無い訳ではない。
むしろ、自責の念に苛まれていたのだ。
あの子は・・おかしい・・。
ノゾミの正直な感想ではあるが、二人の主従関係のバランスは崩れつつあった。
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