意識を喪っていたのは僅かな時間に過ぎない。
薄っすらと眼を開けたカナエは、ゆっくりと身体を起こしながら周囲を見回した。
図書室?
床の上?
そして全裸の自分?
そこまで認識した時点で、ようやくカナエは何があったかを思い出す。
慌てて腕で身体を覆い隠しながら衣類を探すが、それらしきものは見当たらない。
記憶の限りでは下半身こそ剥き出しにはしていたが、上半身にはキャミソールと体操服を身に付けていた筈。
がらり
図書室のドアが開く音に身を縮めるカナエであったが、入ってきたのは着替えを済ませた制服姿のノゾミであった。
「大丈夫だった?」
含み笑いを浮かべながら、意味深な問い掛けを投げかけるノゾミに対して、カナエは回答のしようがない。
そんなカナエをよそにノゾミは抱えていた荷物を作業台の上に置いた。
「制服とバッグ、取ってきたから。」
「・・・」
礼を言うべきなのだろうか、それとも・・。
だが、まずは最低限の衣服を身に付けてること、そう判断したカナエはキョロキョロとキャミソールと体操服を探すが、やはり眼の届く範囲には見当たらない。
「ここにあるけど・・・これ、着る?」
「?」
カナエは首を傾げながらも、ノゾミから丸められたキャミソールと体操服、そしてハーフパンツを手渡された。
じっとりと湿った、いや、濡れた衣類のズッシリと重い手応えに、カナエはノゾミの言葉の意味を瞬時に理解する。
暫し躊躇った後、ハーフパンツを穿き、素肌の上から直接ブラウスを身に付けるカナエ。
「帰ろっか?」
無言でスカートを穿き、手櫛で髪を整えていたカナエにノゾミが声をかける。
確かに長居は無用だ。
いつ何時、図書室を訪れる者がいないとは限らない。
ノゾミに先導されるように、二人は昇降口で上履きから靴を履き替えて校門に向かう。
「カナエは明日の朝、八時に学校に来れる?」
「え?でも・・」
可能ではあるが、唐突過ぎて質問の意味が分からない。
「いいから。それに、分かってるよね?」
そう言って手にしたスマホをカナエにかざすと、家の方向が違うノゾミは歩き去って行った。
※元投稿はこちら >>