マリア ~遠~
俺は毎日毎日、まりあの元へ通い、磨いた。
毎日、毎日 長い階段を登り 墓を磨き 口づけて、まりあと話した。
晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も、暑い日も、寒い日も……毎日、長い階段を登り
「ただいま」
と声を掛け、まりあの顔や手を磨いて、口づけた。
1日中話をして
「行ってくるよ」
と長い階段を降りた。
「ふぅー、まりあ…年寄りには堪えるよ…それに最近、足が痛くてな…」
時間をかけて、ゆっくり登り
「まりあ、ただいま」
布を出し、墓を磨いてやる。
「綺麗になったよ。さぁ口づけておくれ」
雪が降り始めてきた。
「まりあ…俺もそろそろ疲れたよ…」
雪が強くなり、風が吹いてきて、空を見上げた。
「雪だよ…よく降る町だよな全く…それとも、まりあ お前が降らしてるのか?…ちゃんと見てただろ?毎日、墓を磨きに来てやったぞ」
その時 風が強くなり、ぬいぐるみがコロコロと転がった。
それを拾おうとして、足を滑らせ膝に体重をかけてしまい、支えきれずに墓石に頭を打ちつけてしまった。
バイクの前で手を振る女の子が見えた。
笑っている顔がハッキリと見え、語りかけてきた。
「お疲れさんやったなぁ」
あぁ…まりあ…
やっとお前に会いに行けるよ…長かったぞ。約束の日まで1日もサボらなかったぞ…それも今日で終わりだ…二人の記念日だ…まりあ…今、逢いに行くぞ……
降りしきる雪が老人の体を暖かく包み込むように降り積もっていった。
マリア ~遠~ 終
マリア《輪廻転生》
~永遠~
完結
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