誕生日の次の日、まりあは俺に寄り添い 病院中を元気に歩き回った。
歩き回りながら出会う人 全ての人に
「いい年迎えるんやでぇ」
と笑顔で言っている。
看護婦や医者達にも
「世話なったなぁ、いい年迎えるんやでぇ」
と手を握り挨拶していた。
小さく細く弱々しい まりあに皆が笑顔で答えてくれて、まりあが背中を向け歩き出すと皆が泣いてくれた。
歩き回った翌日は、ベッドで静かに過ごし、晴れやかな顔で雪の降る町を眺めてた。
「オッチャン、今日は何の日か知っとるかあ?」
「あぁ、俺達の特別な日だな…」
「うちが中学生の頃、オッチャンと初めて会ったんが28日やぁ。高校生になって再開した日もそうやぁ。オッチャンが俺の女になれ 言うてくれた日もそうやぁ。」
懐かしそうに嬉しそうに、まりあは話し、俺も続ける。
「空き地で、くたばりそうな俺を助けてくれた日も、俺達の結婚記念日も28日…だな」
「そうやぁ…今日は特別な日やぁ。……だから今日しかアカンのやぁ……」
まりあは手を顔の横にかざし聞いてきた。
「似おとるかぁ?」
「あぁ…今までで一番似合ってるぞ」
まりあは、いつも指輪を見せ聞いてくるが、指輪が似合ってるかとは聞いてない。いつも まりあの真っ直ぐな瞳は
「オッチャンのくれた指輪に似合う、いい女か?うちは いい女でいてられてるかぁ?」
と聞いてきてる。
「この指輪の似合う女は世界で…まりあ、お前だけだよ」
まりあは静かに笑い、目を閉じた。
「今日は大切な日やぁ…うちの最後の記念日やぁ」
まりあの手を握りしめた。
とても暖かい まりあの手を。
「うち、ちょっと疲れたから寝るわぁ…オッチャン…ありがとうなぁ…」
「あぁ…おやすみ…おやすみ………まりあ」
俺はまりあの手を握りしめ続けた。
暖かかった手から温もりが消えていき、まりあはもう喋らなくなった。
気が強く生意気で真っ直ぐな まりあは もう寝言も言ってくれなくなった。
温もりが消えていく握りしめてた手を離し、穏やかな まりあの顔に口づけてから、静かにナースコールを押した。
今日はまりあが次の世界へと旅立った記念日になった。
マリア ~永~ 終
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