夏の初めに、まりあは倒れ
「余命三ヶ月」
と宣告された。
ベッドで眠る まりあの体を俺は毎日突ついてやった。頭から足の先まで体中のあちこちを。
パクパクパク…
モグモグモグ…
パクパクパク…
モグモグモグ…
と。
そのせいじゃ無いだろうが、まりあは冬が来て年の瀬が近付くまで頑張った。
きっと、あの日が来るまで まりあの強い意志で生き長らえたのだろう…
まりあの63回目の誕生日が来た。
子供達と病室で祝い、まりあは楽しそうに過ごし、子供達が帰ると
「うち、ちょっと寝るわぁ」
と横になった。
窓から雪の降る町を眺めてると
「なぁオッチャン…輪廻の話、してくれんかぁ?」
と 言ってきた。
プロポーズをした夜、布団の中で まりあを抱きしめながら語った事がある。
永遠に生まれ変わり続く話を。
「まりあを初めて抱いた日に感じたんだよ。ずっと前から…何万年も前から、俺はまりあを知っていると」
「うちもやぁ!オッチャンを昔から知ってる気がしたんやぁ!」
ベッドで横になっている、小さく細く もう間もなく灯が消えそうな まりあの手を握った。
「だから俺達は、生まれる時も死ぬ時も一緒だよ」
「生まれる時も死ぬ時も一緒やのに、うちはいつも年下なんかぁ……?」
まりあがお茶に手を伸ばしたので、取って飲ませてやった。
「次の世界では、うちが年上やぁ、うちが先に行っとくからオッチャンは後から来るんやぁ」
「俺が年下か?」
「そうやぁ!年下やぁ!可愛がったるでぇ」
まりあはニィーと笑い 続ける。
「オッチャンは12年後に来るんやぁ、今と逆転やぁ」
飲み終えたお茶を俺に渡し ニィーと笑う。
「それまでオッチャンはうちの墓磨きやぁ!毎日毎日うちの墓を磨くんやぁ」
「12年間も毎日か?」
「そうやぁ!そうやぁ!毎日、毎日やぁ!楽しそうやなぁ。うち楽しみやぁ」
まりあは本当に楽しそうに笑っている。
「毎日やでぇ!ちゃんと見張っとくでぇ!」
まりあは横になり眠り始めたが、眠る前に寝言のように呟いた。
「毎日来てなぁ…うちに会いに来てなぁ…」
毎日は大変だな…出来れば逝く時は一緒がいい…
そう願いながら、まりあの体を突ついた。
パクパクパク…
モグモグモグ…
パクパクパク…
モグモグモグ…
パクパクパク…
モグモグモグ………
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