気が付くと無機質な部屋が見えた。
前に見た景色と同じ無機質で白い壁だ。
あの時は会社の上司が来て、管理人が来て、刑事が来た。
今回は違った。
たった一人
ずっと側にまりあが居てくれた。
「目、覚めたんかぁ?」
まりあが覗き込み言う
「危ないとこやったでぇ!うちが助けんかったら、オッチャン地獄行きやったでぇ」
そう言って、ニィーと笑う。
すぐにでも口に出して言ってしまいそうだ…
何処に居た!何をしてた!何故すぐに来なかった!
けれど言えない…
大丈夫か?怪我はないか?辛くなかったか?泣かされなかったか?悲しくなかったか?……
そんな事も聞けない…聞いては いけない…聞く必要もない……
まりあの、やつれた顔を見ると想像がつく…きっと想像以上に酷い世界を生きてきたんだろうと……
俺は聞きたくなかったし、まりあに言わせたくなかった。どうせ、まりあは言わないだろうし。
窓を見ていた まりあが突然
「UFOやぁ!」
と叫び
「UFOやぁ!UFOやぁ!オッチャンUFOやぁ!」
と騒いだり
目を丸くして俺と病院食を交互に見ながら
「なんやこれ……オッチャンの飯は ほんま質素やなぁ…」
と悲しんだり
「オッチャン寝転がってばっかりやなぁ…うち、退屈やぁ」
と欠伸をしたり…
「あの看護婦いいケツしとんなぁ…て書いとんでぇ~」
と俺の顔を睨んでくる まりあを見れるなら、感じれるなら、そして…まりあの唇が俺の唇を塞いでくれてるなら 何も聞く必要はなかった。
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