手も顔も体も真っ黒になり、やがて日も傾き辺りも黒くなってきた。
「あぁ…今日はまりあの誕生日だ…ロウソクを点けてやらないと」
袋からケーキを出すと、ケーキは崩れ炭で黒くなっていた。
平らな場所を探し、邪魔な物を払いのけケーキを置いたが、袋の中をいくら探してもロウソクが見当たらず、俺は町にロウソクを買い行き、ケーキを置いた場所へと戻った。
俺が戻るとカラスが飛び立ち、そこには食い荒らされたケーキのカスだけが残されていた。
それを見てると腹が痛くなってきた。
側にあった袋からノンアルコールビールを取りだし 一気に飲み干してから、缶を思い切り地面に叩きつけ、へこませてロウソクを差し火を点けた。
暗がりに揺れる炎が瓦礫を照らし、俺を照らす。
急に笑いが込み上げてきて声を上げて笑い、周りを見渡し、一緒に飲んでやろうとアル中を探したが見つからず、また周りを見渡し、店長を探し、痩せた男を探し、アベちゃんを探し、チンケな男を探し、まりあを探し、バイクの前で手を振る女の子を探したが、誰一人見つからなかった。
俺は諦め、町を探そうと立ち上がった。
もう燃える物もないだろうからロウソクを消さずに立ち去ろうと思ったのに、突然 吐き気をもよおし、さっきのビールを吐いてしまい、それがロウソクを消してしまった。
町へ行き、缶ビールを何本も飲み、煙草を買って何本も吸い、むせて咳き込んでしった。少し咳き込むつもりが、いつまでも咳き込み、手に血を吐き出していた。俺はまた笑いが込み上げて、皆を呼んだが誰も来ない。
足が痛い。
腹が痛い。
胸が苦しい。
ビールを飲み、フラフラと町をさ迷い…ビールを飲み、ゴミ箱の横で動けなくなり…皆の名前を呼びながら いつしか眠ってしまった。
眩しい光で目を開けたが、ここがどこか解らなかった。
天国でも地獄でも良かったが、いつもの町で俺はガッカリとして 煙草に火を点けた。
またフラフラと歩きながらビールを飲み、煙草を吸い、血を吐いた。
腹が痛い。
公園のトイレで用を足し、手と顔を洗い、鏡を見る。
親父と同じ どす黒い顔をしていた。
親父は肝臓癌でアッサリ逝ってしまった。
亡くなる前に、やたらと腹痛を訴えてたらしい。
俺も 腹が痛い。
まりあ……
もうすぐ逢えるよ…
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