暖かい雪が降ってきた。
今年の雪は妙に暖かい。
店に向かう途中で、一面に雪が舞い落ちてきた。空は明るいのに、暖かい雪がキラキラと光り、まるで誰かが紙吹雪を撒き散らしてるかのように、辺り一面を輝かせた。
空で まりあが
「雪やぁ!雪やぁ!」
と喜んでいるようだった。
店に入ると店長が神妙な顔つきで書類を見ていて、俺が来たのも気付かなかったのか、声を掛けるとビックリして こちらを見て、慌てた感じで書類を隠す。店長の顔に笑いは無く、血の気が引いていた。
昼のピーク前に店長に呼ばれ、休憩室へ入ると神妙な面持ちで相談を持ちかけられ、俺は承諾し
「必ず返す」
との口約束だけで、ぽちぽち客が気だした店を一旦出て、銀行へと向かった。
明日期日の支払いが足りないらしい。財布から出してやる額では無かった。何社分かの取引先への支払いが足りない。
貯金する気など無かったが、朝から晩まで働き、やる事も買う物も無いので自然と金は残っていっき、10年以上続けば、それなりの額になっていた。
そのほとんどを降ろしカバンに詰めた。
自分の墓ぐらいしか、買う予定も無い。俺の墓など小枝を差すぐらいで構わんが、隣に立派な墓を立ててやりたい。大きく綺麗な墓を。
その墓には、変な化粧をしてやる。メザシを添えてやる。その横で眠れるなら俺には小枝1本差してもらえれば、それでいい。
店に戻ると、まばらな客を店長とパートのオバチャンと痩せた男で対応している。昼のピークは過ぎたとはいえ、やはり客は少なかった。
休憩室に入ると すぐに店長も入って来て、俺に頭を下げ、カバンを開けて中を確かめ、カバンも閉めずに何度も俺に頭を下げてくる。
その時、何の用か痩せた男が入って来て、部屋の隅で何かを探しだした。
店長はカバンを閉め、痩せた男が出ていくのを待ったが、ブツブツ言いながら探しているのを見て、カバンを金庫にしまい机で書類を整理しだした。痩せた男は金庫を閉める音を聞いて、しばらくしてから「あった、あった」と部屋を出ていった。
また店長は頭を下げてきたが、俺は着替えるとすぐに休憩室を出て仕事に戻った。
仕込みの途中、少し開いた休憩室のドアの隙間から店長がカバンの中の札の束から数枚抜くのが見え、店長は夜には帰るからと言って店を出ていった。
※元投稿はこちら >>