マリア 《生》
彼女はずっと探し求めていた。生まれた時からずっと。小さい頃に1度 会った気がするが、それが何か思い出せない。町を歩きすれ違う…違う。教室を見渡す…違う。テレビを 雑誌を マンガを見る…違う。屋上から見渡す…違う。違う。違う。
何が違うかもわからないが、彼女の子宮が探し求め、子宮が違うと感じる。子宮が探し 子宮が男を求める。手っ取り早く男に抱かれ、確かめる。…違う…違う…違う。
子宮が違うと教える。
彼女は探し求める。
答えを探し 男を探し 抱かれる。けれど…違う。
手がかりはあった。
子宮が男のモノを包み込む感触があった。けれど それが答えなのか、それが何なのかは
思い出せない。
アベちゃんが東京へと旅立った春、店長が履歴書を見せ「明日、よろしく」と言ってくる日は無かった。
応募が来ないと言っていた。
店も忙しい日以外は客もまばらで、新しいバイトはいらないかと思えてきてる。
その分、俺の仕事が増え また朝から晩まで働き通しになった。
別にやる事もない。
それで良かったが、体が少し辛かった。年のせいか 昔、無理やり退院して這いずり回った時の無茶が今頃になって、痛みだした。足も背中も胸も、時々 痛み出す。
何故か腹にも変な痛みが走る。我慢出来ない痛みでもないから俺は朝から晩まで働き通した。
アパートへと帰ると、相変わらず廊下でアル中が寝ている。アル中はご機嫌な時だけ声を掛けてくる。
「よ~兄ちゃん!ヒック… 一緒に酒ぇ ウゥ 飲むか~?」
「よ~よ~ ヒック、兄ちゃん!ウゥ、ウゥ 若い姉ちゃんは ウゥ~ 元気か~ ヒック 俺にも ヒック 紹介してくれんか~」
時には やらせろ だの 他所でやっとんか とも言ってくる。それ以外は寝てるか、暗く汚い目で睨んでくるかで、毎日 同じ事を繰り返す。
俺はドアを開け
「ただいま」
と声を掛け、まりあのプリクラに口づける。
時々寝れない時にマンガを見る。パラパラ捲るだけで読んではいない。それでもマンガを買い揃えていく。
いつの日だったか、ゴロンと寝転びマンガを読む、まりあの姿が忘れられずに……
「続きないんかぁ?」
と声が聞こえてきそうで…俺はマンガを買い揃えていく。
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