秋になり、アベちゃんのビキニも見れなくなった。
その分アベちゃんは綺麗になって、助手席に座っている。
無駄話をしている時の唇が色っぽくなってきた。
その唇をあまり見れない。最近アベちゃんはすぐに俺の顔を見詰めてくる。町を歩くと自然と腕を組んでくる。夏にはまだ小さかった胸が俺の腕を押してくる。少女が大人に成るのは早いものだと教えてるくれる。
質問も答えづらいものになってきた。
「主任、私の事どお思います?」
「真面目で仕事が出来て、よく働く高校生だ」
「ミスばっかりですよ~。…それに真面目かな?」
秋には、この程度で機嫌よく無駄話に戻ったが、冬になると
「それだけですか?」
「他は?」
と聞いてくる。
「真面目で働き者で……それでいて可愛い」
「可愛くないですよ~」
と言いながら、満足気に無駄話に戻る。
雪が降りだし、町がチカチカと輝きだし 赤い服がウロウロと歩き出した。
アベちゃんは今日も助手席で聞いてくる。
「………それでいて可愛い」
そう答えても今日のアベちゃんは違った。
俺の腕を見詰めて聞いてくる。
「それだけですか?」
俺の腕まで掴んでくる。
「最近、胸が苦しいんです…これって恋ですか?」
「さぁ…どうだろう…」
「私…苦しくても、平気です。主任の顔見てたら平気です。これって……愛…ですか?」
「……」
煙草が吸いたくなった。火を点け、深く吸い込み 空に向かい吐き出して
「お嬢ちゃん、火傷するぜ」
と臭いセリフを言いたかった。
けど俺は、煙草も酒も臭いセリフで女を抱く事も、あの日以来 止めた。
アベちゃんは俺を見詰めている。
「恋に恋してんじゃないか?」
「解らないです。私、解らないです…だから苦しいんです」
ギュッと腕を握りしめてくる。
「そろそろ帰ろうか…」
「彼女さんが待つアパートに帰るんですか?……私…平気です。彼女さん居ても…平気です。…ダメですか?」
「さぁ帰ろう」
エンジンをかけたが、更に握りしめて言う。
「嫌です!教えて下さい!これって愛ですか?主任は私の事嫌いですか?」
「愛ってのは、人に聞かなくても自分で答えを出してるものだ。アベちゃんはまだ誰も愛してない…さぁ帰ろう」
アベちゃんは無駄話をせず、助手席でずっと考えていた。
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